部門紹介

東京国際映画祭の上映作品は、多彩な主要11部門によって構成されています。

コンペティション
Competition

コンペティション部門では、本年、東京国際映画祭に応募された数多くの映画の中から厳選された15本の作品を上映します。15作品のうち8作品がワールド・プレミア(世界初上映)、残り7作品はアジアン・プレミア(アジア初上映)となります。映画祭の最終日には授賞式が行われ、5名の審査員によって選考された東京グランプリ、審査員特別賞、最優秀監督賞、最優秀女優賞、最優秀男優賞、最優秀芸術貢献賞が授与されます。
昨年大きな存在感を示した中国映画は、今年も2作品を上映します。また、昨年は1作品もなかった東南アジアの作品が3本入っています。さらには、ドキュメンタリーに分類できる作品が2本入っている点にもご注目ください。
世界が大きく揺れ動いているなか、映画監督たちがそれぞれどのように現代社会の問題に向き合っているか、そのためにどのような映画手法を駆使しているか、ぜひともスクリーンで発見していただければと思います。
 

プログラミング・ディレクター
市山尚三

アジアの未来
Asian Future

2013年の第26回TIFFから始まった「アジアの未来」部門は、長編3本目までのアジア(日本・中東を含む)のフレッシュな作品を世界に先駆けて上映するアジア・コンペティション部門です。最優秀作品に贈られる「アジアの未来 作品賞」を目指し、日本人監督の2本を含む、すべて世界初上映(ワールド・プレミア)の10作品が競い合います。
 思い起こせば、今年のヴェネチア映画祭で受賞した『LOST LAND/ロストランド』の藤元明緒監督のキャリア初陣もTIFF2016の当部門。デビュー作『僕の帰る場所』がプレミアを飾り作品賞を受賞したのでした。
 今年もまた、新たな映画の形に挑むものや、他者とのコミュニケーションのありようを問うものなど、まさにアジアの未来を占う新鋭たちのチャレンジングな作品が並びます。また、コンペ外の特別オープニング作品として、アジア映画界の交流に情熱を傾けた映画評論家の旅の軌跡を追った『佐藤忠男、映画の旅』を上映します。
 

シニア・プログラマー
 石坂健治

ガラ・セレクション
Gala Selection

本年の「ガラ・セレクション」部門は14作品を上映します。カンヌ映画祭で上映された『エディントンへようこそ』、『Sirāt(原題)』、『風林火山』、上海国際映画祭のオープニングを飾った『She Has No Name』、トロント国際映画祭で上映された『レンタル・ファミリー』、ニューヨーク映画祭で上映された『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』といった世界の映画祭で上映された話題作、そしてカンヌ映画祭で上映された『恋愛裁判』をはじめ、注目のスター俳優たちが出演する日本映画の最新作が揃い、映画祭を盛り上げます。
 

プログラミング・ディレクター
市山尚三

ワールド・フォーカス
World Focus

「ワールド・フォーカス」部門は、現在の世界の映画の潮流を知ることのできる作品を紹介する部門です。今年も、ベルリン、カンヌ、ロカルノなど、様々な国際映画祭で話題を呼んだ作品が集まりました。例年通り、スペインやラテンアメリカの秀作を紹介してきた「ラテンビート映画祭」との共催による4作品も上映します。今年は、日本とブラジルの国交樹立130周年を記念し、クラシック作品から最新作までを含む6作品を上映する「TIFF/NFAJクラシックス ブラジル映画週間」を開催します。また、台湾映画の新作4作品を特集する「台湾電影ルネッサンス2025」、さらに、ベルギーのフランス語圏にあたるワロン地域の作品2本を上映します。
それぞれの作品から現代の世界の様々な側面が見えてくることは間違いありません。まだ日本での劇場公開が決まっていない映画も多いため、この部門での上映がきっかけとなり、日本での公開が実現することを期待したいと思います。
 

プログラミング・ディレクター
市山尚三

Nippon Cinema Now
Nippon Cinema Now

「Nippon Cinema Now」は、日本映画の新作を上映する部門です。選考にあたっては、「海外に紹介されるべき日本映画」という観点を重視しました。選ばれた9本の作品は、劇映画あり、ドキュメンタリーあり、国際共同製作作品あり、というバラエティに富んだラインナップで、既存の映画製作の手法にとらわれずに作られた鮮烈な作品が今年も揃いました。
 今後の日本映画を担うであろう才能ある監督たちが作り出したこれらの作品が、この上映をきっかけに様々な国際映画祭に展開されることを期待したいと思います。
 

プログラミング・ディレクター
市山尚三

アニメーション
Japanese Animation

アニメーション部門は、最新の注目作を上映する「ビジョンの交差点」で、海外5作品、国内5作品を上映します。海外の5作品は結果として、さまざまなアプローチから「私と世界の関係性」に注目した作品が並びました。国内の5作品は、日本のアニメーション表現の奥行きを感じられる多彩な表現の作品が並びました。また今年、公開から40周年を迎える『天使のたまご』の4Kリマスター版の上映も行います。またレトロスペクティブは、本年が戦後80年ということを意識して、1945年に公開された日本初の長編アニメーション『桃太郎 海の神兵』を上映します。
 

プログラミング・アドバイザー
藤津亮太

日本映画クラシックス
Japanese Classics

巨匠・成瀬巳喜男監督の生誕120年を記念し、傑作『浮雲』など3作品のデジタルレストア版を上映します。また、本年亡くなった篠田正浩監督を追悼して代表作3本を上映、そして、文豪・三島由紀夫生誕100年を記念し、三島由紀夫の小説を原作とする作品3本、三島由紀夫の姿をとらえたドキュメンタリー1本を上映します。
このほか、岩井俊二監督作品、周防正行監督作品、さらに小津安二郎監督についてのドキュメンタリーを特別上映するなど、例年にない豪華なラインアップとなりました。
 

プログラミング・ディレクター
市山尚三

ユース
Youth (TIFF Children / TIFF Teens)

この部門では、10代の方々にぜひとも観ていただきたい作品3本を上映してきましたが、今年もまた、10代の方々はもとより、一般の映画ファンの方々も必見の強力な作品が揃いました。
また、本年は初めての企画として、ティーンズ映画教室に参加した中学生たちと俳優の池松壮亮さんがこの部門の作品を鑑賞し、自由に意見を交わす「TIFFティーンズシネクラブ報告会」を開催します。
 

プログラミング・ディレクター
 市山尚三

TIFFシリーズ
TIFF Series

「TIFFシリーズ」は、ここ最近、テレビ放映やインターネット配信を前提としたシリーズものが数多く作られるようになり、その中には劇場用映画に勝るとも劣らないクオリティを有するものがある、という状況を踏まえ、優れたシリーズものを紹介する部門です。
今年はAbemaTVが製作した、芸能界の闇を扱ったサスペンス・ドラマ『スキャンダルイブ』を上映します。
 

プログラミング・ディレクター
市山尚三

ウィメンズ・エンパワーメント
Women's Empowerment Section

東京都の支援を受け2024年に創設されたウィメンズ・エンパワーメント部門は、新たな勢いをもって2年目を迎えます。スペイン、香港、トルコ/アフガニスタン、エジプト、カナダのチベット人コミュニティの女性による監督作品に加え、日本の2作品を選出。テーマは移民、10代の恋愛、障がい、児童労働から、戦争と強制退避、キャリア追求する母親のジレンマまで多岐にわたります。今年度は対話と連携、国際共同制作を促し、互いに繋がり、刺激し合い、力強い変革の火種となることを目指します。
 

シニア・プログラマー
アンドリヤナ・ツヴェトコビッチ

新部門
アジア学生映画コンファレンス
Asian Students' Film Conference

アジア各国の映画学校が推薦する60分未満の実写、アニメ映画から選出された学生映画のコンペティション部門です。すでにカンヌ他の映画祭で受賞している秀作もラインナップしています。

プログラミング・ディレクター
Programming Directors
プログラミング・ディレクター

市山尚三(いちやま しょうぞう)

1963年生まれ。松竹、オフィス北野をベースに主に海外の映画作家の作品をプロデュースする。主な作品にホウ・シャオシェン監督の『フラワーズ・オブ・シャンハイ』(1998)、カンヌ国際映画祭審査員賞を受賞したサミラ・マフマルバフ監督 の『ブラックボード』(2000)、カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞したジャ・ジャンクー監督の『罪の手ざわり』(2013)等があ る。また1992年から1999年まで東京国際映画祭の作品選定を担当。2000年に映画祭「東京フィルメックス」を立ち上げ、ディレクターを務めた。2013年より東京藝術大学大学院映像研究科の客員教授。2019年、川喜多賞受賞。 2021年、東京国際映画祭プログラミング・ディレクターに就任。

市山尚三
シニア・プログラマー

石坂健治(いしざか けんじ)

1960年生まれ。早稲田大学大学院で映画学を専攻し、アジア映画、ドキュメンタリー映画に関する批評活動を開始。1990年より2007年まで国際交流基金専門員としてアジア中東映画祭シリーズを企画運営。2007年の第20回TIFFよりアジア部門のプログラミング・ディレクターに就任。 2020年より現職。日本映画大学教授・映画学部長。共著書に『ドキュメンタリーの海へ』(現代書館)など。

石坂健治
「アニメーション」部門 プログラミング・アドバイザー

藤津亮太(ふじつ りょうた)

アニメ評論家。1968年、静岡県生まれ。新聞記者、週刊誌編集を経て、2000年よりアニメ関係の執筆を始める。主な著書に『増補改訂版「アニメ評論家」宣言』(ちくま文庫)、『アニメと戦争』(日本評論社)、『富野由悠季論』(筑摩書房)などがある。東京工芸大学芸術学部教授。

藤津亮太
「ウィメンズ・エンパワーメント部門」シニア・プログラマー

アンドリヤナ・ツヴェトコビッチ

映画監督、教授、起業家、初代駐日マケドニア大使。2021年には、WIN Inspiring Women Worldwide Awardを受賞。日本大学で映画研究の博士号を取得し、京都大学で客員教授を務める。東京を拠点とするBrioNexusの創業者兼CEOである。東京国際映画祭では2021年にAmazon Prime Video テイクワン賞の審査委員、2023年に「SDGs in Motion」のプログラム・キュレーターを務め、2024年ウィメンズ・エンパワーメント部門のシニア・プログラマーに就任。同年、TIFFCOMでシンポジウム「生成AIが映画にもたらすチャンスとリスク、未来像」の企画・司会を担当した。映画監督としては映文連アワードの部門優秀賞を受賞。世界経済フォーラムや国連気候変動会議などで講演を行なっている。


アンドリヤナ・ツヴェトコビッチ
第38回東京国際映画祭 作品選定アドバイザリーボード
※50音順

Advisory Board Members for the 38th TIFF

幅広い知見・人脈と多様な価値観を有する外部専門家の協力を頂き、上映作品を選定しました。

安藤紘平

(あんどう こうへい)

早稲田大学名誉教授

金原由佳

(きんばら ゆか)

映画ジャーナリスト

関口裕子

(せきぐち ゆうこ)

映画ジャーナリスト


プラチナム パートナー