2025.11.01 [イベントレポート]
ブルース・スプリングスティーンはエルビスの“すべて”が好きだった!来日時の秘話を音楽評論家が明かす
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第38回東京国際映画祭ガラ・セレクション部門に選出された『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』のジャパンプレミアが11月1日、TOHOシネマズ日比谷で開催。音楽評論家で作詞家の湯川れい子、音楽評論家で本作の字幕も担当した五十嵐正が登壇し、ブルース・スプリングスティーン来日時のエピソードや本作の魅力について語った。

舞台は、1982年のニュージャージー。ロックの英雄、アメリカの魂と称され、今も世界中のスタジアムを熱狂させるスプリングスティーンだが、「Born in the U.S.A.」の前夜、彼は成功の重圧と自らの過去に押し潰されそうになっていた。スプリングスティーン役をTVシリーズ「一流シェフのファミリーレストラン」のジェレミー・アレン・ホワイトが演じ、『クレイジー・ハート』のスコット・クーパーがメガホンをとった。

五十嵐がクーパーの監督デビュー作『クレイジー・ハート』について「ご存知のとおり、中年のカントリーシンガーをジェフ・ブリッジスが演じ、オスカーを獲りました。そうするとそのあとで、ミュージシャンの伝記映画や伝記風の作品を撮ってくれという依頼が無数に来るらしいです。例えばエルビスや、マイルス・デイビス、チェット・ベイカー、グレイトフル・デッドなど、大物の企画がいっぱい監督のところに来たんですけど、全部断ったらしいです」と監督取材時のエピソードを披露する。

さらに、実在のミュージシャンを描く際に、許諾を取ることの難しさも強調しつつ「本作の原作は、自伝や伝記、評伝や小説ではないんです。しかもまだ生きている人の話で、ブルース側も非常に協力をしてくれたから、できたらしいです」と制作の経緯について語った。

湯川は本作を観た感想について「いわゆる音楽映画ではなくて、本当にブルース・スプリングスティーンという人を深掘りしてくれているなと。皆様はきっとブルースのことをよくご存知だと思いますが、一片一片の音楽が短編小説のようで、いろいろな匂いや風景、深い心情を持ったシンガーソングライターです。その辺のブルースをここまで見せてくれたことが、私はこの映画の一番の素晴らしさだと思いました。また、ジェレミー・アレン・ホワイトという主演の俳優さんが、自らリトル・リチャードの歌なんかも吹き替えなしで歌っていて、その辺もすごいです」と感心する。

スプリングスティーンは1985年、88年、97年と、3回来日公演を行っているが、2人は実際に来日時に本人と対面している。五十嵐は、97年にソロで来日した際に開かれたウェルカムパーティーで、湯川がスプリングスティーンの隣の席で話し込んでいたのを見ていたそうで「あの時、どんな話をされていたのですか?」と湯川に質問する。

湯川は「ほとんど忘れちゃっていますが、本当に印象に残っているのはひとつだけ。ブルースの場合、リズムというよりも、音そのものにものすごいこだわりを持っています。エルビス・プレスリーの「監獄ロック」かな。そのリズムパターンから、音にこだわってることがお分かりいただけると思います。ブルースは非常にエルビスの影響を受け、あのロックを目指した人。彼との長い話の中で、唯一、明確に正しく覚えているのは、私がブルースに、「エルビスは本当にお好きだったんですか?どこが良かったんですか?」と伺った時、「Everything!」とおっしゃったことです。そこはすごく鮮明に覚えています」と当時を振り返った。五十嵐もうなずき「映画を観ていたら、なるほど!とうなずけるシーンがありますね」と納得した様子だ。

最後に、これから本作を観る人へのメッセージを求められた湯川は「アトランティックレコードを作ったアーメット・アーティガンとか、ブルースに「ロックン・ロールの未来を観た」と言ったジョン・ランドーなど、実際にいた人物が俳優さんとして出てきて、アカデミー賞の助演賞にもノミネートされそうだとか、いろんな話も出てきております。そういう意味で実在した人、そしてもちろんブルース自身もそうですが、そういう人間の映像としても、歴史の映像として観ていただいても、値打ちがあって楽しいものではないかと思います」とアピール。

五十嵐も「ブルースの恋人役の女性が出てきます。複数の女性から作った架空の女性ですが、あとは、ほとんど実際の人物で、ほとんどが実際に起きたことです。だから「本当かよ、これ!」って思わないでちゃんと観れます。いろんなことが学べるし、メンタルヘルス、親子の話もそう。僕はネブラスカの偉大なアルバムを作った時、トラウマと闘ったことや、アーティストの苦闘、それを支える人たちが印象に残りました」と見どころを語った。

すると、湯川が「大事なことを言うの、忘れちゃった!」として「ブルースはニュージャージー出身で、ネブラスカはちょっと遠いでしょ。それで「そんなところに、あなたは行ったことがあるのですか?」と最初にお会いした時に聞いたら「もちろん行ってるよ。僕は本当にアメリカのあちこちに行ってるよ」と答えてくれたことも申し上げておきます」と追加でコメント。音楽ファンは2人のトークを心から楽しんでいた様子だった。

第38回東京国際映画祭は11月5日まで、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催中。
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