2025.11.02 [イベントレポート]
「口から口に伝えられた物語は”当てにならなくて”面白い」10/31(金)Q&A『裏か表か?』

裏か表か?

©2025 TIFF
写真は10/29のQ&Aに登壇された際のもの

 
10/31(金)コンペティション部門『裏か表か?』上映後、マッテオ・ゾッピスさん(監督/脚本・左)、アレッシオ・リゴ・デ・リーギさん(監督/脚本・右) をお迎えし、Q&Aが行われました。
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マッテオ・ゾッピス(以下、マッテオ監督):皆様、お越しいただきまして本当にありがとうございます。そして、長いエンドクレジットの間もずっと座って残ってくださってとても嬉しく思います。私達二人とも、東京は初めてです。ずっと日本に憧れており、来たいと思っておりました。ですから、実際に日本というものを体験する機会に恵まれ、とても嬉しく思っております。ありがとうございます。
 
アレッシオ・リゴ・デ・リーギ(以下、アレッシオ監督):ありがとうございます。実は今晩、プロデューサーのアレックス・C・ロ-さんが来てくださっております。会場に多分、いらっしゃると思うんです。この映画は彼女なしでは作れませんでした。どうぞ皆様、盛大な拍手を彼女に捧げてくださいますようお願いいたします。
(会場拍手)
皆様が最後まで残ってくださったことを大変嬉しく思います。私も彼と同様、東京は初めてです。とてもエキサイティングで美しい街だと思います。そして、とてもクレイジーな街だとも感じました。外見は全然違いますが、イタリアと東京というのは共通点があるのではないかなと実感しております。とにかく、今夜は皆様にお会いできることができて、本当に嬉しく思っております。また、東京国際映画祭にご招待いただきまして、この場を借りてお礼を申し上げたいと思います。
 
司会:安田佑子アナウンサー(以下、安田アナ):面白かったですね。途中からこの映画、一体どう終わるんだろうと思いましたけれども。みんなで笑顔で楽しめる作品で爽快でしたよね。パンフレットに4名の脚本家がクレジットされています。どのように製作されたのですか。
 
マッテオ監督:この映画は、作るのに3年かかりました。皆様ご存知のように、映画というのはとても長く(時間が)かかります。前作は7年でしたから、3年といっても少しは早くなったかなと思っております。通常、我々は一緒に脚本を書きます。今回、4人というのは、例えば、イタリアで有名な脚本家のカルロ・サルサさんの場合、出来上がった作品を監修していただくような形で、お手伝いしていただいた方々も含めましてクレジットしています。
 
──Q:ヴィットリオ・ジャンピエトロさんが音楽を担当しています。参加の経緯をお聞かせください。
 
アレッシオ監督:優しいお言葉をありがとうございます。覚えていていただいてとても嬉しいです。やはり我々、ヴィットリオ・ジャンピエトロさんとは初めての作品であるショートフィルムから2作目、3作目というように、私ども2人で映画を作る時は必ず彼に音楽をお願いしております。そこにはいくつかの理由があるんですが、本当に脚本を深く読んで理解してくれて、実際に撮影が始まると必ずほぼ毎日セットにいて、編集の段階でも一緒にいてくれるわけなんですね。そこまで付き合ってくれて、その作品に合った作曲をしてくださいます。今回、「西部劇ウェスタンのバラード」という形でお願いしました。前作は、どちらかというとフォークソングで、それぞれのキャラクターが歌うという形で曲も作ってもらいました。彼の作ってくれた音楽は一つの作品のキャラクターであり、一部であるという風に思っております。今回もリサーチを入念にしてくださって、当時のイタリアで使われていた色々な楽器を使って、このスコアの中でも演奏してくれています。
 
──Q:この映画を製作するにあたって着想を得たものはありますか。
 
マッテオ監督:実はですね、ストーリーテリングをアレッシオと2人でやっているのですが、口から口に伝えられた物語ってとても面白いなと我々は思っています。理由の一つは、「当てにならない」ということです。実際のことが伝わっているのか、まことしやかに伝わっていのるのか、定かではありませんが、伝説っていうことでみんな信じているわけですから、あてにならないと思います。実は、アメリカの有名なカウボーイ、バッファロー・ビルが実際にイタリアに来ました。2回もローマで興行をしています。彼の興行にまつわる伝説で、彼が連れてきたアメリカのカウボーイとタリアの牛使いがロデオの試合をしたと。実際にどっちが勝ったのか、新聞記事も残っています。ただそれは、イタリアの新聞記事なので当てにならないと思いますが(笑)伝説になっています。今もまだ、イタリアには牛使いさんがいるんですって。皆さんご存じないかと思いますが、まだいらっしゃいます。
 
アレッシオ監督:我々は、西部劇というより、これまでと全く違う西部劇を作りたい、ひっくり返したいと思ったんです。じゃあ、ひっくり返すためにはどうすればいいか。男性主人公が多い西部劇を、女性主人公にしようってことで、彼女の物語にしました。その一環として、カウボーイはかっこいいはずなんだけど、困った問題をたくさん抱えているカウボーイにしてぐちゃぐちゃにしたかったので、結果的に首まで切っちゃいました。
(会場笑い)
 
──Q:キャスティングについてお伺いしたいです。
 
マッテオ監督:バッファロー・ビルのワイルド・ウェスト・ショーは、当時、国際的な大イベントだったんです。そういうことにまつわった物語なので、海外の役者を使いたいと思いました。つまり、海外の女優さんで、イタリアにやってきて演じなければいけないというシチュエーションを考えて、いろいろな女優さんにオーディションをしました。最初の頃に、この方がいらっしゃって。見た瞬間、ナディア・テレスキウィッツさんに決めて、一緒に映画を作ろうと言いました。
サンティーノ役のアレッサンドロ・ボルギさんは、イタリアで一番有名な俳優さんと言っても過言ではありません。僕たちはこれまで、プロの俳優ではなく、その村に住んでる方々を使って映画を作ったりしてきましたが、今回は真逆を行こう、最も有名な俳優さんを使おうということで彼にお願いしました。そして、僕なりのジョークで、あるシーンをお願いしました。そうしたらオッケーって言ってくださったのでそうさせていただきました。
 
安田アナ:ありがとうございます。皆さんご覧になったかもしれませんが、ナディアさんは、今年日本で公開された『ロザリー』で実在した多毛症の女性を演じていらっしゃいましたね。
 
監督:(ナディアさんって東京国際)映画祭で最優秀女優賞を取りましたっけ?
 
安田アナ:そうですね、『悪なき殺人』というタイトルで(日本)公開された作品です。(※第32回(2019)TIFFコンペティション部門『悪なき殺人』(TIFF上映タイトル『動物だけが知っている』)で最優秀女優賞を受賞。)
 
──Q:タイトルについての質問です。邦題は『裏か表か?』でコインを表現していますが、英題は『Heads or Tails? 』で「頭と尻尾」という意味です。映画製作のどの段階でこのタイトルが設定されたのでしょう。
 
マッテオ監督:とても鋭いです。やっぱり、ヘッドという言葉が入っているので、二重の意味を持たせられるかなと思いました(英語でコインは表=heads、裏=tails と表現する)。それと、裏とか表って「賭け」ですよね。人生も賭けだったり、運命に任せなければならない時もあります。そういった意味でも面白いかなと思いました。僕たちの映画は、何か答えを提示しているわけでは決してないので、観客に大きなクエスチョンマークがついて、さてな?という形で皆さんにいろいろ感じ取っていただければいいかなと思いました。コインの裏と表、物語の裏と表。こっちが出たら違う展開になってたかもしれない、あっちが出たら全く違った展開になっていたかもしれないということで、面白いタイトルだと自分たちも思いました。
 
アレッシオ監督:すみません。横道に(話が)逸れるのがイタリア人の癖なので。さっき言ったプロデューサーのアレックス・C・ロ-さんが後ろにいます。ぜひ盛大な拍手をお願いします。
(会場拍手)
 
安田アナ:最後になりますが、お二人は次回作の製作も進めているんですよね。
 
アレッシオ監督:実は、この作品に入る前から考えていた作品があって、今はそれを2人で手がけております。それと、それぞれ独自のプロジェクトも抱えています。また一緒に仕事をすると思いますが、お互いの明るい未来に向かってとにかく頑張って作品を作っていきたいと考えています。
 
安田アナ:マッテオ監督とアレッシオ監督の次回作にもご期待いただきたいと思います。ぜひTIFFにもいらしてください。

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