2025.10.28 [イベントレポート]
『ユニコーン・ウォーズ』監督の最新作『デコラド』アジアン・プレミア 藤津亮太氏が語るアルベルト・バスケスの軌跡
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第38回東京国際映画祭のアニメーション部門で10月28日、劇場アニメ『デコラド』がアジアン・プレミア上映され、プログラミング・アドバイザーの藤津亮太氏(アニメ評論家)が会場のTOHOシネマズ シャンテで上映前にトークを行った。

同作は、『ユニコーン・ウォーズ』で知られるスペインのアニメーション監督、アルベルト・バスケスの最新作。世界が偽物であるという感覚にとりつかれて精神的危機に瀕している中年ネズミのアーノルドは、世界の真実に迫ろうする。

藤津氏は、バスケス監督が2000年代初頭からコミックスの単行本を出版する漫画家としての顔をもち、11年に自身のコミックスを原作にした短編『ユダ、カトリックのリス(原題「Judas, Catholic Squirrell」)』でアニメーション制作に取り組んだことを解説。また、バスケス監督はインタビューのなかで、自分の創作の原点のひとつとして、ネズミのキャラクターを使ってホロコーストを描いたアート・スピーゲルマンによる漫画「マウス アウシュヴィッツを生きのびた父親の物語」を挙げていることにも触れた。

初長編アニメーションは、ペドロ・リベロと共同監督で手がけた『バードボーイ 忘れられた子供たち(原題「Birdboy: The Forgotten Children」)』(15)。体のなかに悪魔をやどしたバードボーイという鳥の少年と、島から逃げてきたネズミが主役の物語だ。藤津氏は、動物のキャラクターをとおして、アイデンティティ・クライシスや社会へのシニカルなまなざし、ブラックユーモアなどを表現するところに、バスケス監督作の特徴があると指摘した。

日本で公開された際にも話題をよんだ『ユニコーン・ウォーズ』(22)も、擬人化されたテディベアが魔法の森にすむユニコーンと対立する物語だった。非常に暴力的な描写もあることでも知られ、同作はスペイン映画芸術科学アカデミーが主催する第37回ゴヤ賞にも選ばれている。

自身の短編を長編化した最新作の『デコラド』は、アメリカで10月17~19日に開催された映画祭「アニメーション・イズ・フィルム・フェスティバル」で審査員特別賞を受賞している。中年ネズミのアーノルドが、感情的・経済的・実存的な複数の危機に直面しながら日々をすごしているところからはじまる本作についてバスケス監督は、「人生の意味と私たちが経験する危機を描いた実存主義的な寓話である」と説明したことを藤津氏は紹介し、「大変ユニークなスタイルで、現実世界のあり方や人生というものを切るアルベルト・バスケス監督の世界をこれから楽しんでいただければと思います」と結んだ。

第38回東京国際映画祭は、11月5日まで開催。なお『デコラド』の2度目の上映は、11月5日午後0時50分からTOHOシネマズ シャンテで行われる(上映のみ)。
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