10/30(木)、コンペティション部門『母なる大地』上映後、チョン・キット・アンさん(監督/脚本/作曲)、ファン・ビンビンさん(俳優) をお迎えし、Q&Aが行われました。
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チョン・キット・アン監督(以下、監督):こんばんは。こんにちは。チョン・キット・アンです。皆さんお越しいただきまして本当にありがとうございます。
ファン・ビンビンさん(以下、ビンビンさん):皆さんこんにちは。今お昼ですよね。だから、こんにちは、というのが正しいですよね。今回、来日することができてとても嬉しく思います。そして、東京国際映画祭で皆さんとこの映画を一緒に観ることができて、本当に嬉しく思います。本当にありがとうございました。
司会:安田優子:歴史的背景を知りたいなと思わせてくれる映画でしたね。自分たちが引き継いだサイアム(タイ王国の旧国名Saim) の土地がイギリスになって。かと思えばそれがマレーシアだよって言われて…。契約のゴタゴタで土地を取り上げられてしまった人たちが実在したということですよね。どうしてこの場所で撮ろうと思ったのか、教えてください。
監督:映画の舞台になっている場所は私の故郷、マレーシアのケダ州 でございます。古代はサイアムの領地だったんですね。後にイギリスの植民地となりました。実はこの土地の問題は未だに解決していないんです。
当然、物語についてもお話をさせていただきたいと思いますが、小さい時に、ケダ州にはたくさんの呪術師がいると聞いたことがあります。よく聞いたところによりますと、ある伝説的な呪術師の女性がすごい技を持っていたらしく…。私もいろんな呪術師に、インタビューをしたり、リサーチをしたりしましたが、いろんな言い伝えがありました。あの女性の呪術師が、ある日突然、消えてしまい、どうして消えてしまったのか?という言い伝えです。実は、インドネシアから、もう一人のすごい呪術師がやって来て、彼女と戦って、彼女(ケダ州の呪術師)が消えてしまったと。そういった物語は、現地でいっぱいありました。
私がこの映画の中で何を描きたかったのかといいますと、女性が自分の旦那さんや自分の子供を守るとなったら一生懸命やらなければならない。(自分が)犠牲になっても、自分の家族、自分の土地を守ろうとする、そういう勇敢な女性を描きたかったんですね。従って、物語全体としては、とても優しい気持ちでこの映画を作りました。
司会:安田優子:ありがとうございます。ビンビンさんは、15年前にTIFFで『ブッダ・マウンテン』という作品で最優秀女優賞を獲られていて。 またTIFFに来ていただいて本当に嬉しいです。今回、2回目のトークセッションなのですが、1回目の(トークセッションの)時に、監督の書いている脚本、プロジェクトを知った時に、ぜひ自分のためにこの脚本を取っておいてほしい、と仰ったという話をしていました。そこまで(この作品に)惹かれた理由をお聞きしたいです。
ビンビンさん:15年前、私は初めて東京国際映画祭にやって来ました。『ブッタ・マウンテン』で主演女優賞を受賞したんです。その時、実は私はちょうど韓国で映画撮影をしていて、本当に忙しくてですね、東京からはもう離れていたんですね。ある日、徹夜で映画を撮っていて、翌日、もうへとへとになって寝ていたところ、スタッフから電話がかかってきまして。「賞を獲りましたよ」と。それでびっくりして、すごく興奮してベッドから飛び降りて喜びました。東京国際映画祭は、国際的に大変重要な映画祭の1つだと思っておりまして、しかも、コンペティション部門に参加する作品は、世界各地の素晴らしい作品でしか参加できないと思っています。このような映画祭で受賞することができて、本当にそれ以上の嬉しさ、あるいは光栄だと思っております。
15年前に、このような形で初めて女優賞を受賞したのですが、その時、私は決心しました。俳優としてこれからどういう役作りをしていくのか、どういうものを表現していくのか、私は一生懸命やらなければならないのだ、という風に決心しました。ある意味では、この賞は、私にとって、非常に大きな励みとなったといえます。
15年経って、再び私は東京国際映画祭にやってきました。この作品の制作過程においては、いろんなお話が実はあります。先日の1回目の舞台挨拶の時にも、この話はすでに触れましたが、人間の感情や情緒間の表現が非常によくできている話なんです。皆様もすでにご覧になって分かっていると思いますが、この女性は、ずっとこの地で生まれて育ってきたのに、突然、土地を離れなさいと言われます。もう、大変な危機ですよね。どうしたらいいのか、非常に迷うことにもなるわけですが、最終的には戦わなければならないと立ち上がる、そういう女性を描いています。
この女性は、見た目は決して美人ではありません。年齢も若くはありません。だから、皆様が今まで見慣れてきたファン・ビンビンの外見とは全く違う役でこの作品の中に登場したわけなんですね。非常にパワフルで力があるこの役柄について、監督といろんなお話をしました。実は、私が監督から話を聞いた時、まだ脚本が出来ていない段階でしたが、この人物に非常に魅了されました。なんとなく自分自身の今の心境とも動向が似ていて、非常に近いと思いました。
この役柄を演じることによって、たくさんの力を貰いました。逆に、私も一生懸命演じた結果、この役柄に色々な力を与えることができました。先ほど監督も言っていましたが、この作品は非常に優しさを持っています。皆さんも映画って力強いものだなと感じることがあると思います。そういう作品もありますが、それに対してこの作品は非常に優しい。私が思うに、優しさは一番強いと感じます。そういう気持ちも、役作りの時、心の中に込められていたと思います。
監督から脚本ができたという話を聞いて、私は監督にアプローチしました。監督からはこの作品を2028年、もしくは2029年に撮影したいと聞いたのですが、「もう少し前倒ししないか。できればこの脚本を私のために取っておいて。私はこの人物が大好きだから私がやりたい。」と伝えました。監督と色々な雑談もしながら、この物語の展開を聞いて、色々な質問もしました。そして「私がやったらどうですか?」と。その当時の監督の反応は、「うーん、大スターでしょ? やりにくいんじゃないの?」 というものでした。一緒に仕事をする皆さんは大体そう思われているようです。ところが、監督と交流を重ねていくうちに、監督は次第に、ファン・ビンビンだったらいけるかなという気持ちになったんだと思います。撮影期間は非常に長かったのですが、監督とは色々な仕事をしながら親友になりました。今日、この舞台に立って、初めてこの映画をご覧になる皆さんとお話ししますが、やはりこの作品はチャン監督のスタイルがよく現れている素晴らしい作品だと思います。監督は、物語だけではなく、音響、音楽、映像、カメラ、ビジュアル的な美意識も非常に高いです。そういう意味で本当に素晴らしい作品だと思っています。このような映画に参加することができて大変嬉しく、光栄だと思っております。