10/29(水)あいち国際女性映画祭 in Tokyo『強くなるとき』上映後に、渡辺英津子さん(左・あいち国際女性映画祭エグゼクティブ・プロデューサー)、松葉美佐さん(中・あいち国際女性映画祭)、粉川なつみさん(右・Elles Films) をお迎えし、トークショーが行われました。
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松葉美佐さん(以下、松葉さん): 松葉美佐と申します。本日はお越しいただきありがとうございます。
粉川なつみ(以下、粉川さん): Elles Films の粉川と申します。よろしくお願いします。
司会:八雲ふみねさん (以下、八雲さん):どうぞよろしくお願いいたします。
この映画は、あいち国際女性映画祭でも上映されまして、とても評判が良かったとお話を伺ったのですが、渡辺さん、手応えの方はどうでした?
渡辺英津子さん(以下、渡辺さん):たくさんのお客様からおかげさまで高い評価をいただきまして。アンケート調査を実施したんですけれども、そこのアンケート調査では「自分を大切にしたくなる映画でした」とか、「引退とは題名の通り強くなる時なのだ、という捉え方が新たなものになりました」とか、「昔ながらの悪しき流れを社会問題として問いかける勇気がある作品だ」など、心に響く感想をたくさんいただいたところでございます。
八雲さん:そうなんですね。松葉さんもこの反響というのはどうだったんでしょう?思い通りだったのか、それ以上だったのか、どうでした?
松葉さん:私も最初、上映作品を選定する時に観させていただいたんですけれども、「これは絶対いける」と思って。ディレクターにも「これをぜひやりたいな」っていうふうに言って実現しまして、本日もこうして東京国際映画祭さんでも上映していただいて、とっても嬉しく思っています。ありがとうございます。
八雲さん:私もですね、事前に拝見した時に、今やっぱり K-POPって本当に世界中を席巻していて、今、彼らの音楽を聴かない日はないというぐらい、浸透しているなと日本でも思うところなんですけれども…。でも、その彼らが周囲から作り上げられた虚像ではなくて、自分自身の根幹と向き合っていく姿にとても心を揺さぶられました。もう皆さん見終わった後ですのであえて言うなれば、そんな彼らに監督が優しい光を差し伸べているっていう作品なんだろうなと思って、そこにとても心を打たれました。本当にこうしてですね、あいち国際女性映画祭の(で上映された)作品が、東京国際映画祭で上映されるというのもまたとないチャンスで、こうしてご覧いただいたということも本当に素晴らしいきっかけだなと思うんですけれども、まずはこの上映会の経緯からお聞かせいただけたらと思うのですが。
松葉さん:昨年12月になるんですけれども、東京都と愛知県の間で連携協力に関する協定(「東京都と愛知県の連携・協力に関する協定」) というものが結ばれました。それを受けまして、文化や芸術、スポーツの分野における連携の一環として今回、東京国際映画祭との提携企画、「あいち国際女性映画祭 in TOKYO」 と名付けたものを実現することができました。
八雲さん:すごいことですね。地方自治体同士が連携をして、そこにさらに映画が加わったといった感じなんですね。
松葉さん:そうですね、経済とかあらゆる分野における連携ということで、東京都知事と愛知県知事が連携協定を結んだというふうなところでございます。
八雲さん:他にもこう提携企画としてこれまでどういったことをなさったんでしょう?
松葉さん:そうですね、具体的に「STATION Ai」 (2024年に名古屋市鶴舞に開業した日本最大級のオープンイノベーション拠点)といったものを愛知県の経済の方で実施しておりまして、そちらの方も連携するのではないかとなっております。
八雲さん:将来を見据えると、面白いことがすごく起こりそうですけれどもね。
松葉さん:そうですね。
八雲さん:東京国際映画祭の作品の上映もされているんですか?
松葉さん:そうです。その連携企画の内容といたしまして、東京と愛知の映画祭で上映した映画を相互に交換して上映するという企画になっております。
八雲さん:交換留学生みたいな感じですね(笑)
松葉さん:そうですね(笑)
八雲さん:あいち国際女性映画祭では、東京国際映画祭のどの作品が上映されたのでしょう?
松葉さん:実は、先月9月にあいち国際女性映画祭が開催されたんですけれども、そこで、東京(国際映画祭)で昨年上映され、(アナマリア・ヴァルトロメイさんが)最優秀女優賞を受賞しました『トラフィック』 という作品を愛知で上映しました。
八雲さん:そうでしたか。ご覧になったお客様からの反応はどうでした?
松葉さん:たくさんの方に来ていただきまして、東京との連携企画というものが初めての試みだったものですから、パンフレットなどにも「これは東京から来ました」というふうなことでPRさせていただきましたら、多くの方に観ていただくことができました。
八雲さん:そうなんですね。我々にとっても嬉しい限りではありますけれども。
さて松葉さん、今回、あいち国際女性映画祭は30回を迎えたということで。
松葉さん:はい、今年9月で30回を迎えまして、こちらの『強くなるとき』という作品も30回を記念して、韓国のソウル国際女性映画祭さんからご推薦をいただきまして、愛知で日本初公開をすることができた作品です。
八雲さん:そこでもまた国を越えて映画祭同士での交流があるんですね。
松葉さん:今年は30回ということで、世界の女性映画祭との連携を深めて、情報交換の場とか、発信できるプラットフォームみたいな役割もできるといいなと思いまして。フランスのクレテイユ国際女性映画祭さんと、韓国のソウル国際女性映画祭さんの作品をそれぞれご推薦いただいて、愛知で日本初公開いたしました。
八雲さん:これまでも、女性映画祭同士でつながっていくことってあったんですか?
松葉さん:ソウル国際女性映画祭さんとは2008、2009、2010の3年間、交換というかその時は短編がメインだったんですけれども、ソウルで受賞された短編の作品を愛知でも紹介するとか、ディレクターをお呼びしてシンポジウムを行うとか、交流はあったんですけれども、それが途絶えておりまして、30回記念でまた復活いたしました。
八雲さん:これがまた続いていくと面白いことになりそうですよね。
松葉さん:そうですね、望んでいます。
八雲さん:ではここで改めまして、あいち国際女性映画祭についてご説明をいただければと思います。お願いします。
松葉さん:あいち国際女性映画祭は、1996年に(ウィルあいち)愛知県女性総合センター という建物が開館いたしまして、そのオープニング記念イベントとして、スタートしたものでございます。今年で30回目を迎える歴史のある映画祭になっております。そしてさらに現在、国内唯一の国際女性映画祭という位置づけになっております。映画という親しみやすい素材を通じまして、女性の活躍促進や男女共同参画、これはもとより、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の理解を深めていただくことを目的にして、国内外の女性監督による作品や女性に注目した作品を上映しております。
八雲さん:なるほど。実際に映画祭ではどんなことをなさっているんでしょうか?
松葉さん:作品の上映に加えて、映画と関連した男女共同参画意識の啓発のためのシンポジウムや講演会、監督さんなどをお呼びしたトークイベントなど、そういった様々なイベントも行っております。短編作品を対象にした「フィルム・コンペティション」という部門もございまして、そちらは新人女性監督の発掘・支援、また、映像分野で活躍を目指す女性の皆様方の意識を高めるっていうのもあるのですが、映像や映画関係をはじめとして社会のジェンダーギャップの改善を目指して事業を行っております。
八雲さん:本当に多岐にわたって様々な視点を持って映画を紹介してらっしゃるということなんですね。ありがとうございます。映画祭を越えて上映された作品をまた持ってきていただいて、紹介していただいてっていうのは本当に有意義なことだなと思うのですが、それともう一つ、やはり、映画祭で触れた作品が全国の映画館でまた見ることができるようになるというのが一番我々にとっても嬉しいことなんですけれども、そこを担っているのが粉川さんですよね。
粉川さん:はい、この映画を来年公開させていただく予定です。
八雲さん:どういうところに惹かれたんですか?
粉川さん:やっぱり、この作品が皆さんに伝えたいメッセージというが一番大きいです。というのも、やっぱりこの作品のメッセージ性と弊社が映画を通して世の中に伝えたいことっていうのがすごくぴったり合致するすごい作品だっていうのを感じたんです。というのも弊社は、ウクライナのアニメーション映画(『ストールンプリンセス:キーウの王女とルスラン』)を2022年にこの日本で配給したことをきっかけに立ち上がった会社でして。それから、いろんなお仕事させていただいたんですけれども、やっぱりウクライナがきっかけだったっていうこともあって、こう社会的意義のある作品をたくさん配給していきたいなと思っております。その根底にあるのは、こう、何ていうんですかね、声を上げにくい人々だったりですとか、理不尽な思いをされている方の声を映画を通して、皆さんに伝えたりとかっていうのを我々がやる使命だなと思っております。この作品をある劇場からお勧めしていただいて、拝見した時に弊社がやりたいこととぴったりだなと思って買い付けを決めました。
八雲さん:そうでしたか。粉川さんご自身がやっぱりバイタリティ溢れていて。ウクライナのアニメーション映画を配給するために会社を立ち上げて、それまでお勤めだった会社を辞めたんでしょう?
粉川さん:そうですね、25歳の時に辞め、右も左もわからない、いろんな方に協力していただいて、無事上映することができたんですけれども。その時に感じたことが、映画というのはすごいパワーを持つものっていうのを強く感じました。この映画も、いろんな方が表面は明るくても、心の中ですごく傷ついてるっていう方々だったりとか、今のアイドル業界の構造の歪みみたいなところも、伝えていかなきゃいけないなというふうに思いました。
八雲さん:粉川さんご自身も強くなる時を体験して、この映画と出会ってっていうところなんでしょうかね。
粉川さん:そうですね。
八雲さん:本当に素敵なドラマがどんどん描かれていくんだろうな、なんて思うのですが、最初に粉川さんが愛知のお二方(渡辺さん、松葉さん)に「この映画を配給したいです」みたいな感じだったんですか?
粉川さん:いいえ、全くでして。
八雲さん:皆さん、私から見ると、ものすごく仲良しで、ずっと一緒に活動してらっしゃるように見えるのですが、この映画がきっかけでご縁になってっていうことなんですか?
粉川さん:そうなんですよ。権利元の方から、この作品を愛知の映画祭で上映しますっていうご連絡をいただいて、お伺いさせていただいたところからご縁が始まりました。まさかこの東京で、映画祭でまた上映していただけると思わず。
八雲さん:そうなんですね。本当に、映画が持つエネルギーだったりとか、人の縁を繋いでいくっていうのはやっぱり素晴らしいことですよね。
粉川さん:そうですね。
八雲さん:ありがとうございます。そして、今日はなんと監督からのメッセージを預かってきていらっしゃるということで。
粉川さん:はい、監督が今回、この場所には来られなかったのでお手紙を預かっております。読ませていただきたいと思います。
(以下、粉川さん代読)
ナムグン・ソンといいます。
「本日は映画をご覧いただき誠にありがとうございます。先日開催されたあいち国際女性映画祭を通じて日本の観客の皆様にお会いできたことがとても嬉しかったのですが、さらにいつかは自分の作品を上映してほしいと憧れていた東京国際映画祭でも作品を上映できることになり、本当に光栄です。改めて多くの方々にお礼を申し上げます。この映画は人権に関する映画を制作することになった時に 、「K-POP アイドル産業」という構造の中で個人が商品化される現代の労働環境と若者の姿を絶対に書きたいと思い、すぐに、関係者へ取材を始めました。アイドルの方へ取材し、映画を撮る中で感じたことは、現代の資本主義社会における労働市場は個人に責任を押し付ける形で進化しているように感じています。アイドルに限らず、同じ時代を生きる多くの若者たちがこの構造の中で経験する苦悩や孤立、そしてその痛みを私は書きたかったのです。私たちは人間であって商品ではありません。終わりのない責任や競争に追われていると、本当に大切な自分自身を見失ってしまうかもしれません。皆様には華やかなエンターテイメントの裏側で見えにくい痛みを抱える人々を 1 人の人間としてまっすぐに見つめていただけたら嬉しいです。本日は直接ご挨拶をすることができず大変申し訳ございませんが、皆様の心にこの作品が響くことを願っております」
八雲さん:素敵なメッセージをどうもありがとうございました。映画の根幹に触れる、そして、どういう経緯で作られたのかということを知ることによって、改めて、この映画に触れていただけたらなと思います。ありがとうございます。
さて、最後にインフォメーションです。11月3日(火)14:00から台湾、韓国、愛知の女性映画祭のディレクターが東京に集結します。ミッドタウン日比谷で行われるのですが、女性映画祭の力をテーマに語り合う「ウィメンズ・エンパワーメント・ラウンドテーブル「女性映画祭の力」」が開催されます。あいち国際女性映画祭からは、木全純治ディレクター、佐藤久美イベントディレクター が参加されますので、ぜひこちらの方もご注目ください。ありがとうございます。
最後に一言ずつ、インフォメーションなどありましたらそれも踏まえまして、お言葉をいただければと思います。では渡辺さんからお願いします。
渡辺さん: 今回初めて、東京国際映画祭とあいち国際女性映画祭が連携できたということを大変嬉しく思っております。これがずっと、長く続くような形で進めていければとても嬉しいので、皆さん、よろしくお願いいたします。
松葉さん:本日は皆様お越しいただきましてありがとうございました。皆さんそれぞれ、いろいろな感想を持たれたかと思いますが、周りの方に今日の映画のお話をしていただいて、ぜひ、日本公開が始まりましたら、観にいっていただけると嬉しいなと思います。ありがとうございます。
粉川さん:このような貴重な機会をいただき、誠にありがとうございました。ぜひ、皆さま来年の公開を楽しみにしていただけたらと思います。
そして、全く別の作品ではあるのですが、弊社が今、パキスタンの映画をクラウドファンディングしておりまして。パキスタンの監督が10年かけて作った、パキスタン初のアニメーション映画でして、31日までクラウドファンディングをしております。皆さまお友達に、宣伝のご協力をいただけたら、大変嬉しいです。
八雲さん:どうもありがとうございます。これからも映画祭同士、密にコミュニケーションをとっていけたらなと、私も切に願っています。今日は貴重なお時間をありがとうございました。