10/31(金)Nippon Cinema Now 部門『名もなき鳥たち』上映後、ヤン・リーピン監督(左)、大須みづほさん(俳優・左から2番目)、チャン・ニンハオさん(俳優・右から2番目)、たむらもとこさん(俳優・右) をお迎えし、Q&Aが行われました。
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ヤン・リーピン監督(以下、監督):監督のヤン・リーピンと申します。大雨のなか来ていただいて、本当にありがとうございます。
大須みづほさん(以下、大須さん):髙橋 凛 を演じました、大須みずほです。本当にお足元の悪いなか、たくさんある作品のなかからこちらを選んで来てくださって、本当にありがとうございます。短い間ですが、よろしくお願いいたします。
チャン・ニンハオさん(以下、チャンさん):チャオ・ブーリャンを演じました、チャン・ニンハオと申します。初めて日本で映画を撮りました。すごく楽しかったです。よろしくお願いします。
たむらもとこさん(以下、たむらさん):佐々木翠役 をさせていただきました、たむらもとこです。夜、お疲れのところ、雨のなか、たくさん来ていただいてありがとうございます。短い時間ですが、楽しんでいってください。よろしくお願いいたします。
司会:市山プログラミング・ディレクター(以下、市山PD):ヤン・リーピン監督は、去年、東京藝術大学 修了制作の『雲ゆくままに 』を Nippon Cinema Now で上映しました。その前には、短編作品で Amazon Prime Video テイクワン賞 を受賞するという快挙がありました。東京国際映画祭もすでに3本目の上映で、今回は、藝大を出てから初めて作られた作品となり、オリジナルのストーリーだと思いますが、どういうところからこのストーリーを発想されたのかお聞きしたいです。
監督:最初のきっかけは、藝大を卒業して、芳泉文化財団から助成金をもらえるとのことで、自分でストーリーを書いたことです。そのストーリーは元々、藝大の卒業制作で撮ったけど使えなかった昔のストーリーの一部が反映されています。同じ脚本コースの方と相談して、一緒にストーリーを仕上げました。
市山PD:日本人女性と中国人男性のラブストーリーと言っていいのか、どうなのかというすごく微妙なところが面白いのですが、そのような設定を考えたのは元々、大学でやりたかったセッティングですか?
監督: そうですね。僕が今まで作った映画は、はっきりしたストーリーを描いて結果を出すという作品があまり多くないと思います。結果より過程、つまり、何かあって、何かを選択して、何となく進んでいくというストーリーがすごく好きで。そこで、その作品もそういう流れをセッティングしました。
──Q:劇中歌についての質問です。全ての曲が、始めから終わりまで、一曲通して使用されていました。どのような意図があるのでしょうか。
監督:質問、ありがとうございます。うーん。撮影の時も、カメラマンからそういう質問がありました。曲を全部使いますか?と聞かれ、僕は「全部使いますよ」と答えました。なぜなら、今回のカメラマンも、撮影時に初めて本物のライブハウスに行く体験をしました。それも、映画にとってすごく重要な一つのポイントかなと思っています。やはり、ライブハウスに行ったことがない方、そういうジャンルの映画を観たことがない方が、完全に曲の頭から最後まで聞いてみることで、どういう感覚を持つか。自分の感覚も映画にとってすごく大事なものだと思います。
──Q:ワンシーンが非常に長いカットでした。撮影前から長回しカットを使おうと考えていたのですか。
監督:もちろん。撮影の前から、そういう設定の方法で撮っていくという考えでした。
──Q:役者さん3人の方が、それぞれ役をどのように作られたかお聞きしたいです。工夫された点や苦労した点があればお聞きしたいです。
大須さん:凛は、私から遠い存在だと、最初は思いました。どっちかというと、チャオ・ブーリャン役 のほうが、自分の考え方とすごく近くて。自由を求めて、自由になりたいというのが理由の一つで俳優を始めたみたいなとこもありました。凛という人物は、どんな人なんだろうと考えて、まず意識したのは、背筋をまっすぐ正すというのを意識していました。リンは、自分に自信がなくって、周りに流されて生きてるみたいな描写がありますけど、でも実は誰よりも芯があって、すごく素敵な女性だと思っていたので、そこは意識しました。
チャンさん: 僕も台本が好きで。チャオ・ブーリャンの個性や性格が、元々台本にあったので、本当にその通りやればと(いいと)思っていました。
元々、中国からいろんな文化を体験して、日本で違う文化も体験して、普段の自分とブーリャンが同じ考え方、思いで…。未来はどこに行くのか。この芸術をやっているうちにどうなるのかという困り(悩み)というのも…。その感覚を活かした。そのまま活かして、ブーリャンにしました。
たむらさん:私は普段、俳優をしながら、歌も歌っているのですが。翠は、ロックバンドのボーカルということで、ロックですか!っていうのが(ありました)。本当にロックな曲が初めてでした。エレキギターを弾くのも初めてだったので、それがすごくドキドキだったのと、一応、(演じた佐々木翠は自分の)年齢より少し上の設定で、学生運動の頃をわかっているような70(歳)くらいの設定なんですよね。で、ラブアンドピースな、ロックバンドだったりするんですけど、精神が。ただ、見ていただくと分かるように、すごく自然に70代でしたでしょ?そんなことないですか?やっぱり、メイクさんもすごく上手で、私ももう、スキンケアもしない日々を続け、終わった後、化粧水を塗ったら、染みるぐらいまで仕上げていきました。性格的には、多分、監督が現場で言ってくれた「翠は、寂しい」って。
監督: そうですね。ちょっと寂しい雰囲気が、ちゃんと伝わってます。
たむらさん:ありがとうございます。ヒントをいただいたので、それを糸口にさせていただきました。ありがとうございます。
──Q:ペースの遅い映画を撮った意図を教えてください。
監督:僕はリアリティの作品を求めるのではなく、フィクションを作ろうと思っています。そして、フィクションは、現実と同じ時間で何か起こるというものではないから、少し緩めのテンポで作って、普段の日常で発見できないことを見つけてもらえればと考えています。
──Q:映画人としてのこれからの野心をお聞かせください。
大須さん:俳優を始めた時は、やっぱり売れたいとか、そういう結構ミーハーなことを思ってたんですけど。コツコツと続けてきて、さっき、監督が言っていたみたいに、結果じゃなくて、過程を大事にしたいというのは年々強く思っていまして。自分の過程全部が宝物になるような人生になればいいなって思ってます。