11/3(月祝)、Nippon Cinema Now部門『LOST LAND/ロストランド』上映後、藤元明緒さん(監督/脚本/編集)、北川喜雄さん(撮影監督) をお迎えし、Q&Aが行われました。
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藤元明緒監督(以下、監督):皆さんと日本初上映です。東京国際映画祭で『LOST LAND/ロストランド』を一緒に共有できてすごく嬉しく思っております。残念ながら、主演の子どもたち2人、他の出演してくれたロヒンギャの人たちは映画で描かれている通り、国籍もなくパスポートも取れない状況なので、映画祭に参加することは今の時点ではすごく難しい状況です。一緒に観られなくて残念だなと思っています。僕らが、今日は代わりにいろいろご質問を受けていきたいなと思っていますので、よろしくお願いします。
北川喜雄撮影監督(以下、北川さん):撮影監督の北川です。今日は観ていただきましてありがとうございます。今回2回目の上映ということで、1回目、僕は涙もろくて、ちゃんと話すことができなかったので、メモを見てお話しさせてください。
まず、監督とプロデューサーの渡邉 さん、ありがとうございます。結構後から分かりましたが、とても挑戦的なテーマであったということをひしひしと今、感じています。国際共同制作として始めて、マレーシアクルーも頑張っていただき、とてもいい仲間ができました。そして何より、主演のソミーラとシャフィ 。旅をしながら一緒に撮影できた、あの瞬間を一緒にカメラに収めることができる場を提供してくれたこと、それが僕の新しい視点を広げたと思いました。ありがとうございます。
監督:本当にありがとうございます。そして、本当に長旅お疲れ様でした。またこれから、映画頑張っていきましょう。
北川さん:それともう一つ、お客様にもお伝えしたいと思ったのが、まずは観ていただいてありがとうございますというのと、ソミーラ、シャフィ、出演した人たちは、映画だけで完結していません。彼らの生活があるので、この映画を観たことがきっかけになって、皆さんの人生に少し考える時間を作ってもらったり、自らの行動を起こす勇気の後押しになればいいなと思っています。改めまして、今日は来ていただきまして、ありがとうございます。
司会:新谷里映さん(以下、新谷さん):ありがとうございます。監督、シャフィとソミーラは本当に素晴らしい演技で、演技初挑戦だったと思うんですけど、どうやってこの逸材を見つけられたんですか?
監督:本当にたまたまでして。中学生ぐらいの兄弟の想定だったんですけれども、キャスティングをするためにロヒンギャの方々が通う小学校や中学校に行った時に、クラスルームでちょろちょろ遊んでいたのがシャフィ君でした。当時4歳だったのですがシャフィ君を見た瞬間、みんながもう、引き込まれるというかすごい可愛らしくて。本当にあの映画の中のままです。すごく気に入って彼の家にお邪魔させてもらい、そうしたらソミーラっていうお姉ちゃんもいまして。もう本当に2人の関係性というか見ていて素晴らしいな、と。この2人がマレーシアを目指して旅をするっていうのを撮ってみたいと思ったので、脚本も全て2人に書き換えました。ソミーラちゃんも演技にすごく興味があるという子だったので、出ていただきました。
──Q:資金集めで苦労したエピソードがあれば教えてください。
監督:ありがとうございます。当然このような企画は、そもそも日本語も出てこない作品なので非常に難しくはあります…。今日は来ていませんが、渡邉プロデューサーとはずっと一緒に映画を作ってきて、彼がこの映画を成立させるためにすごく頑張ってくれたっていうところが一番大きいです。これで3作目なのですが、これまで一緒に作って応援してくれた方々とか、新しく出会った方とか、たくさんの皆さんが支えになってこの映画が成立しました。僕は感謝しかありません。
──Q:私のパートナーがミャンマー系カナダ人のフィルムワーカーです。彼も将来、自分の故郷について映画を作りたいと言っているので、彼に一言アドバイスをいただければなと思います。
監督:ありがとうございます。これから作る作品、一緒に上映したいですね。1本の映画で社会にどんどん押し出していくっていうのは、やっぱり1本だけだとすごく難しいんです。色々な作家さんがいて、色々な作品があって、それらがまとまってどんどん連帯して上映していけば何かが変わるような気はしているので、ぜひ作品が完成したら一緒に上映したいなと思います。よろしくお願いします。ありがとうございます。
──Q:映画の撮影中に逃げてしまったり、難民申請をしてしまうかもしれないという不安はなかったのでしょうか。
監督:出演者の方々が別のところに逃げる、出ていくということは特に心配もしていなかったです。
新谷さん:エンディングに向かっていく結末について少しお話しいただけますか?
監督:ラストシーンは、脚本上は(上映されたものと)全然違ったものでした。本当に、映画をどう終わらせるかっていうのは非常に難しいところでして。なぜなら、現実世界でも同様のことが起きている中で、映画だけがめでたしと終わるのは非常に難しい。僕も、すごくコロコロと変わっていく中で、撮影中に取り入れた部分で、あのようなラストの形になりました。
北川さん:この撮影でもいろいろあって、時系列に(沿って)撮影を進めたということもあり、あまり詳しくは覚えてないんですが、監督のいうとおり、地続きになる現実というものがあって、そこに対して撮影中、頑張って毎回スクリプトチェンジして、みんなに伝えていたのを見て読んでですね…。とても腑に落ちるラストシーンになっていったので、僕としてはすんなり受け入れましたという状態です。
──Q:現実にいる方を演技も交えて撮影する時の工夫について教えてください。
北川さん:監督が場を作ってくれました。子どもたちというものに対して僕らができることは、ただ受け入れるということです。「起きる場」を、台本に書かれた場所、想定内で、ただ起きたことを追いかけるというようなカメラ的な撮り方です。その場を作るということに関しては、監督、お願いします。
監督:場を作ってくれたのは、僕以外にもいろんなクルーがいて、演じる彼らが過ごしやすい環境を作ってくれたのはクルーの皆さんなので、そこは本当に2人ともやりやすかったんじゃないかなと思っています。ただ注意というか、小さい子どもを撮影する時、隠し撮りのような、遠くから撮るっていうのはすごく嫌でした。はっきりと、「僕らはあなたたちを撮影したい」という意思表示を、北川さんはカメラマンとして一番前に立っているので、僕ら大人が見せていくっていうのは意識していたところですね。あの2人は本当に、あの2人以外もみんなそうなんですけど、受け止めてくれて、見ていてすごく良かったですね。関係性が壊れちゃうと、いくらフィクション映画とはいえ、ただ撮っているだけになってしまうので。上手く言えないですが、精神的な部分もありますね。その部分の撮り方は気をつけていたところだと思います。
新谷さん:ありがとうございました。それでは最後に皆様にメッセージをお願いできますでしょうか?
北川さん:最初の挨拶でほぼ言いたいことは言ってしまいましたので。観ていただきまして、ありがとうございました。
監督:今、海外の映画祭も含めて回っているんですけど、(ソミーラとシャフィの)2人やロヒンギャの人たちは一緒に来ることが出来ないので、観客の皆さんの映像を撮ってメッセージビデオ的なものをずっと作り続けています。今日も皆さんを撮影してもいいですか?
(会場拍手)
監督:じゃあ、僕がスタートって言ったら皆さん、イェーイと。
(会場笑い)
監督:ここにみんながいると思って拍手を。では、北川さんの用意スタートでいきます。
北川さん:じゃあ、いきますよ。僕は(普段は)映す方なんですけど映される方です(笑)。用意スタート!
(会場拍手)
監督:ありがとうございました。
新谷:ありがとうございました。せっかくなので、監督からもう一言皆様にお願いします。
監督:こういう締め方は難しいですね(笑)。今、観てもらえることがすごく嬉しいです。映画を上映して観てもらうことって、思ってる以上に結構すごいことだと最近は感じているので、すごく嬉しいというのと、やっぱり主演の2人がいないと、直接届かないっていう…、正直に言うとなんとも言えない状況です。一緒にまた皆が参加した上映が出来る日が来ることを祈っております。その時はまた皆さん来てください。ぜひよろしくお願いします。