11/4(火)、アジアの未来部門『老人と車』上映後に、マイケル・カム監督とリム・ケイトンさん(俳優)をお迎えし、Q&Aが行われました。
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マイケル・カム監督(以下、監督):実は今日、劇場で観るのは3度目です。1回目はシンガポールで観ました。やはり、劇場で観るのは特別な感じがして、観客の皆様がどのように感じておられるか、何を考えて観ていらっしゃるかというのが伝わってくることが、私にとって大切なことです。観客の皆様の反応は、毎回違います。
こちら(東京国際映画祭)の1度目の上映の時は、私はどちらかといえば自意識過剰な人間ですので、ドキドキしながら観ていました。しかし、今日は2回目(の上映)ですから、少し緊張感も和らいで、観客の皆様がどう感じておられるかというのを感じつつ観ることが出来ました。
司会:石坂健治シニア・プログラマー(以下、石坂SP):Q&Aも2回目になりますので、重複を避けるために、前回のお話を簡単にまとめてから質疑に移りたいと思います。監督は、短編映画を長いこと作ってこられて、長編には取り掛かれなかったのですが、韓国の支援があって、この作品が完成したということがお話しとして出ました。もう一つは、ラストシーンについてのお話しでした。
監督:先ほど、この初長編作の製作過程で韓国からの支援があったとご紹介いただきましたけれども、その内訳を少し申し上げます。この映画は大変な低予算で作られた映画です。私は、昼間、シンガポールの映画学校で教鞭をとっておりまして、そこで知り合った韓国人の教授が、低予算で映画を作るにはどうすればいいかということを教える専門家だったんですね。それで、いろいろと教えを乞うことが出来たので、(この映画を)作りました。資金上の支援というものは韓国からは一切ありませんでした。
石坂SP:正確にフォローしていただき、ありがとうございました
──Q:車内での会話が印象的でした。車内での会話内容の対比について教えてください。
監督:車は物理的な所有物ですよね。私たちは皆、そういった(物理的な所有物)ものに対して、色々感情的なつながりを持ちがちです。ある人はとても肯定的な感情、ある人は否定的な感情を持つかと思います。この話の場合、トランスジェンダーの女性は車に対してとても前向きな感情を持っていいます。老人は妻を亡くしていて、車を買った時に、「妻と共に買った」とか、そういうことを思い出すのが辛くて忘れようとしている。そういう対比になります。
──Q:演出で苦労したことがあれば教えてください。
監督:先ほど申しました通り、大変低予算でつくった映画です。色々な問題に直面するので、一つ一つ解決する必要があるわけです。あの8ミリの映像ですが、実は、私の妻と子どもの映像です。ですから、安く仕上がりました。そのような解決法があったということと、もう一つは、ああいう映像を使うことで、観客の皆さんが登場人物に感情的なつながりを持ってもらうための入り口となると考えたんです。観客の方々には、こちらが色々な情報を押し付けるのではなく、色々とご自身で感じ取って、考えながら観ていただきたい。そう思いつつ作ったんですが、それに成功したかどうかは分かりません。
リム・ケイトン(以下、ケイトンさん):私の場合も、かなり想像力を働かせながらこの仕事にあたる必要がありました。けれど、「喪失」は、誰にでもあることですよね。例えば、誰か大切な人を失うとか、自分の子どもに落胆するとかいうようなことは、誰にでもあることなので、そういった点からいろいろと想像力を働かせました。
──Q:主人公のホックさんと友人が昔話をしているシーンについて過去に大チャレンジをしたが失敗したと語っていましたが、どんなチャレンジだったのでしょうか。
監督:実は、ホーチミンに出掛けてホックは浮気をしたんです。それを男友達に話しているというシーンでしたね。
──Q:長編第一作ということでしたか、このテーマを選んだ理由を知りたいです。
監督:私は57歳ですから、決して若くはありません。そういうわけで、年老いていくこと、家族について、そして家族への責任などについて色々と考えることが多いことから、この長編をつくりました。また、父がかなりの高齢で、車を運転することも出来なくなったんですね。そのことがかなり大きなきっかけです。
──Q:撮影中、監督からどんな演技指導を受けましたか。
ケイトンさん:監督が私にして欲しいとおっしゃったことは、たった一つでした。それは、監督のご両親にお会いするということでした。2、3時間、共に過ごしたわけですが、表面的には、「こんなことして何の役に立つんだろう」と思わないでもありませんでした。つまり、年老いた方々にお会いして、その様子を真似しても意味がないのではと思ったんです。しかし、無意識下で吸収したものがありました。ですから、その無意識の領域において、ご両親とお会いしたことがとても役に立ったと思います。
監督は寡黙な方ですので、あまりああしろこうしろとおっしゃることはありませんでした。役者としては、自分が出来る限りの準備をして臨み、やるべきことをやるしかないという思いでした。