2025.11.06 [イベントレポート]
「強い闘士のように社会と戦ってきた姉妹を知ったことがこの映画を撮るきっかけになりました」11/4(火)Q&A『ガールズ・オン・ワイヤー』

ガールズ・オン・ワイヤー

©2025 TIFF

 
11/4(火)ワールド・フォーカス部門『ガールズ・オン・ワイヤー』上映後、ヴィヴィアン・チュウ監督をお迎えし、Q&Aが行われました。
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ヴィヴィアン・チュウ監督(以下:監督): 東京の観客の皆さんこんにちは。今日は、私のこの映画を観に来てくださって本当にありがとうございます。おそらくご覧になってお疲れになったかと思います、お疲れ様でした。
 
司会:石坂健治シニア・プログラマー(以下:石坂SP): いえいえ、ヴィヴィアンさんも審査委員としてご参加いただいておりますのでお疲れ様です。
 
監督:こうやって審査委員でも呼んでいただいて、審査をさせていただいて、たくさんの素晴らしい映画を観ることが出来て、とても嬉しかったです。その審査の仕事も終わりましたので、今日ここに出て参りました。
 
石坂SP:早速『ガールズ・オン・ワイヤー』の話です。拝見してワイヤーアクションの撮影風景などもたっぷりと観ることが出来て、とても楽しかったです。スタジオというか、屋外の施設があるのですか。
 
監督:そうですね、この作品のワイヤーアクションのシーンを撮ったのは映画村なのですが、象山影視城というところです。どこにあるかと言いますと、中国浙江省の寧波(ニンボー)付近にありまして、もう20年ぐらいになります。陳凱歌(チェン・カイコー)監督の『運命の子』という作品もそこで撮られていました。
 
石坂SP:主演のお二人の女優さんもとても素晴らしいですね。中国映画を多く観ている方ならどこかの作品でご覧になっている方だと思いますが、素晴らしい女優さんですね。
 
監督:ありがとうございます。
 
──Q:ちょっと悪い3人組がいましたがどういう意図でその人たちを入れたのでしょうか。
 
監督:まず、主演の女の子ティエン・ティエンの父親がどうしてあのような状況になったのか、3人組と関係があるわけです。あの3人組によってですね、ティエン・ティエンの父親は薬物中毒になってしまうわけです。そして借金を返すことを迫るわけですよね。そういうわけで、この3人組の存在は割と重要な存在になってくるのです。
 
──Q:この作品を撮影する元々の趣旨、そしてこの作品を通してどのような思いを伝えたかったのか、お伺いしたいです。
 
監督:なぜこの映画を作ろうと思ったかという動機ですが、この映画は実在のある家庭の状況に基づいて、それを脚本化して制作しました。
2018年に知ることになったのですが、80・90年代当時、中国の改革開放が進む中、重慶(ジュウケイ)という場所での出来事でした。役所に勤めていたご主人が、商売を始めることにして、リスクを冒して新しい分野へ踏み出す、下海(シァハイ)と呼ばれる状況が、非常に社会的によく見られた現象でした。経済活動にどんどんと加わっていくということですね。その家庭はですね、洋服の加工、縫製といった小さな家内工業を営んでいました。社会の進歩と共に自分たちの生活を変えたいという思いが当時の中国の人にはあったのです。
しかしながら、そのプロセスにおいて色々な問題が生じてきました。そして麻薬についても、その頃の社会問題として出てきました。そうした実際の状況を、私は取材の過程で聞いて非常に驚きました。完全に私の当時に対する理解をすでに超えていました。重慶の街で私の想像を絶するようなことが行われていた。私が巡り合ったのはその象徴的なある家庭だという風に思いました。そこから興味を惹かれて、彼らの経験した喜怒哀楽を、悲しみを、苦しみを映画にしたいという風に思ったわけです。
そしてその後2019年に、モデルとなった家族の従姉妹(いとこ)の妹の方が亡くなってしまったのです。それを知って、私は本当に辛く思いました。そして私はその時にこの従姉妹の姉妹の物語を撮ろうという風に強く思ったわけです。これがこの映画を撮る強い動機だったわけですが、辛い彼らの運命を知って、辛くはあったけれどそれを何とか映画として皆さんに伝えたい、一本の映画に仕上げたいという思いが強くなりました。
この姉妹の成長の過程を大きな時代の中で撮っていくということが非常に重要だろうと思いました。そして私は彼女たちの境遇に非常に感動しました。この姉妹は孤独な中で、必死に社会の中でもがき、あがき、まるで強い闘士のように社会と戦ってきた姉妹であるという風に感じました。そのことが私がこの映画を撮りたいという強いきっかけです。
 
──Q:ポスターにも、劇中にもカラスが色々なところに登場しました。監督はカラスをどのように扱いたかったのでしょうか。
 
監督:素晴らしい質問です。カラスは非常に重要です。この鳥はですね、実は中国の古代の地理書、神話である『山海経(せんがいきょう)』に出てくる鳥でもあるわけです。元々とても縁起のいい鳥として描かれていて、太陽の中にいる鳥、太陽の使者という風に描かれていまして、3本足で真っ赤に輝く太陽の中にいるので「金のカラス」、金烏(ジンウー)という風に呼ばれておりました。とても縁起のいい鳥でした。
ところが、この2000年の歴史の中で、その状況は徐々に変わりました。あんなに縁起のいい鳥だと言われていたのが、段々と不吉な鳥という風に言われるようになりました。この2000年のプロセスのなかで、そういう風に良くない象徴にカラスがなってしまったことが、この映画でも描いた女性の立場と非常に関連しているのではないかと私は感じていました。社会の片隅に追いやられたカラスと女性の置かれた境遇というものを象徴させています。
 
石坂SP: 確かに日本でも、かつてはとても縁起のいい鳥として神話にもありました。そろそろ時間が来ました、監督に一言締めていただければと思います。
 
監督:時間がものすごく短くて、皆さんと深くお話はできなかったですけれど、こういう機会を作っていただいて皆さんに感謝したいと思います。梅林(茂)さん、わざわざ観に来てくださって本当にありがとうございました。
 
石坂SP: 多くの中国作品の音楽も手掛けていらっしゃる作曲家の梅林茂さんが会場にお越しでした。(会場拍手)

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