第38回東京国際映画祭が開催中のヒューリックホール東京で10月30日、三島由紀夫の生涯を描いたポール・シュレイダー監督の日米合作『
MISHIMA』(原題:Mishima: A Life in Four Chapters)が上映された。
本作は、三島由紀夫が割腹自殺を遂げた最期の日を舞台に、三島の過去をたどる回想と、小説作品を映像化した3つの劇中劇を織り交ぜて展開。1985年にカンヌ国際映画祭で世界初上映され、芸術貢献賞を受賞。アメリカでは劇場公開後にソフト化もされているが、日本ではさまざまな事情から長年“幻の映画”とされていた。
製作総指揮は、フランシス・フォード・コッポラとジョージ・ルーカス。そんな本作が、約2年間に及ぶ権利関係の処理を経て、この日、同映画祭の企画「生誕100年 三島由紀夫特集」として、ついに日本のスクリーンで初めて公式上映された。関係者によると、コッポラの製作会社であるアメリカン・ゾエトロープが、4Kデジタルの上映素材を提供したという。
約800枚のチケットは即完。異様な熱気に包まれるなか、上映を前に来日中のシュレイダー監督、製作の山本又一朗、アソシエイト・プロデューサーのアラン・プールがトークショーを行った。
シュレイダー監督は、マーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』(76)の脚本も手がけており、同作の主人公トラヴィス・ビックル(ロバート・デ・ニーロ)と、緒形拳さんが演じた三島の共通点について、こう述べた。
「私はキリスト教信者なので、苦しみの中から栄光をつかむという考え方をもっており、それを『タクシードライバー』で追及した。トラヴィスは一見、粗暴で無教養に見えるが、彼と同じような心理状態にあって、華やかなキャリアを築いた成功者が遠く離れた東洋にいた。それが三島だった。どちらも苦難を乗り越えてこそ、恍惚を得られると信じていたのではないしょうか」
本作の撮影中には、シュレイダー監督の娘が日本で誕生。このエピソードについては、山本氏が「奥さんが妊娠なさっていて、これ以上待つと、日本行きの飛行機に乗れないと。すると、コッポラが「とにかく行け」と(笑)。日本側は俳優をキャスティングしていたので、実際にスタートできるかヒヤヒヤし、緊張した」と振り返った。
そして「いずれにしても、アメリカ人の監督が、日本人キャストだけで作った、恐らく最初の映画。今日は新作のごとく、日本の皆さんに見ていただくことになりました」と感無量の面持ち。シュレイダー監督も「いつか日本で上映できると思っていたが、それまで私が生きているか心配だった。山本さんがこの船で航海を続けてくれたからこそ」と感謝を伝えた。
現在は「TOKYO VICE」のエグゼクティブプロデューサー・監督も務めるプールにとっては、本作が映画業界に足を踏み入れるきっかけとなり「いまの私があるのは、ポールのおかげ。この場を借りて、正式にお礼を申し上げたい」と謝意を示した。
また、プールは、主演の緒形さんをはじめ、出演した坂東八十助さん、左幸子さん、池部良さん、李麗仙さん、美術監督の石岡瑛子さん、撮影のジョン・ベイリーさんら、いまは亡き関係者を改めて称えていた。
この日の上映には、出演者である萬田久子、永島敏行らが客席に駆け付けた。
第38回東京国際映画祭は10月27日~11月5日まで、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催。
第38回東京国際映画祭が開催中のヒューリックホール東京で10月30日、三島由紀夫の生涯を描いたポール・シュレイダー監督の日米合作『
MISHIMA』(原題:Mishima: A Life in Four Chapters)が上映された。
本作は、三島由紀夫が割腹自殺を遂げた最期の日を舞台に、三島の過去をたどる回想と、小説作品を映像化した3つの劇中劇を織り交ぜて展開。1985年にカンヌ国際映画祭で世界初上映され、芸術貢献賞を受賞。アメリカでは劇場公開後にソフト化もされているが、日本ではさまざまな事情から長年“幻の映画”とされていた。
製作総指揮は、フランシス・フォード・コッポラとジョージ・ルーカス。そんな本作が、約2年間に及ぶ権利関係の処理を経て、この日、同映画祭の企画「生誕100年 三島由紀夫特集」として、ついに日本のスクリーンで初めて公式上映された。関係者によると、コッポラの製作会社であるアメリカン・ゾエトロープが、4Kデジタルの上映素材を提供したという。
約800枚のチケットは即完。異様な熱気に包まれるなか、上映を前に来日中のシュレイダー監督、製作の山本又一朗、アソシエイト・プロデューサーのアラン・プールがトークショーを行った。
シュレイダー監督は、マーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』(76)の脚本も手がけており、同作の主人公トラヴィス・ビックル(ロバート・デ・ニーロ)と、緒形拳さんが演じた三島の共通点について、こう述べた。
「私はキリスト教信者なので、苦しみの中から栄光をつかむという考え方をもっており、それを『タクシードライバー』で追及した。トラヴィスは一見、粗暴で無教養に見えるが、彼と同じような心理状態にあって、華やかなキャリアを築いた成功者が遠く離れた東洋にいた。それが三島だった。どちらも苦難を乗り越えてこそ、恍惚を得られると信じていたのではないしょうか」
本作の撮影中には、シュレイダー監督の娘が日本で誕生。このエピソードについては、山本氏が「奥さんが妊娠なさっていて、これ以上待つと、日本行きの飛行機に乗れないと。すると、コッポラが「とにかく行け」と(笑)。日本側は俳優をキャスティングしていたので、実際にスタートできるかヒヤヒヤし、緊張した」と振り返った。
そして「いずれにしても、アメリカ人の監督が、日本人キャストだけで作った、恐らく最初の映画。今日は新作のごとく、日本の皆さんに見ていただくことになりました」と感無量の面持ち。シュレイダー監督も「いつか日本で上映できると思っていたが、それまで私が生きているか心配だった。山本さんがこの船で航海を続けてくれたからこそ」と感謝を伝えた。
現在は「TOKYO VICE」のエグゼクティブプロデューサー・監督も務めるプールにとっては、本作が映画業界に足を踏み入れるきっかけとなり「いまの私があるのは、ポールのおかげ。この場を借りて、正式にお礼を申し上げたい」と謝意を示した。
また、プールは、主演の緒形さんをはじめ、出演した坂東八十助さん、左幸子さん、池部良さん、李麗仙さん、美術監督の石岡瑛子さん、撮影のジョン・ベイリーさんら、いまは亡き関係者を改めて称えていた。
この日の上映には、出演者である萬田久子、永島敏行らが客席に駆け付けた。
第38回東京国際映画祭は10月27日~11月5日まで、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催。