11/2(日)ウィメンズ・エンパワーメント部門『藍反射』上映後、野本 梢さん(左:監督/脚本)、千種ゆり子さん(中:プロデューサー)、稲村久美子さん(右:エグゼクティブ・プロデューサー) をお迎えし、Q&Aが行われました。
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司会:八雲ふみね(以下、八雲さん):『藍反射』の上映にお越しくださいまして誠にありがとうございます。今、映画を観終わったばかりですけれども、いかがでしたでしょうか。お楽しみいただけましたでしょうか。
(会場拍手)
ありがとうございます。おそらく、皆さんには、今、色々な思いがあるのではないでしょうか。皆さんお待ちかねですね。早速ご登壇いただきましょう。どうぞ皆さん大きな拍手でお迎えください。どうぞよろしくお願いいたします。では、改めて一言ずつご挨拶をいただければと思います。監督からお願いします。
野本 梢監督(以下、監督):本作品の監督を務めました野本 梢です。皆さんご覧いただき、ありがとうございます。いろいろなご感想、ご意見をいただけたらと思います。よろしくお願いいたします。
千種ゆり子さん(以下、千種さん):企画・プロデュースを務めました千種ゆり子と申します。本日はご覧いただき、ありがとうございます。よろしくお願いいたします。
稲村久美子さん(以下、稲村さん):エグゼクティブ・プロデューサーの稲村久美子です。本日は、たくさんの方にお越しいただき、本当に感激しております。ありがとうございます。
八雲さん:ワールドプレミア、上映終了しました。監督、今の気持ちはどうですか?
監督:胸を張るべきなんですが、不安で仕方ないです(笑)ご覧いただけて、本当にありがたいです。
八雲さん:お客様の反応、気になりますものね。
監督:気になります。ワールドプレミアの時は毎回ドキドキです。いかがでしたか、というところで…。
(会場拍手)
八雲さん:温かい拍手をいただいておりますけれども。千種さんはご自分の企画がこうして形になった今の気持ちはいかがですか?
千種さん:まず、こうやって見ていただける方に来ていただいてはじめて、作った意味があると思います。ワールドプレミアでご覧いただいた皆さんに、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。ありがとうございます。
八雲さん:稲村さんは、お客様と一緒にご覧になっていらっしゃったんですよね。
稲村さん:そうですね。今、走ってきたんですけれども、全部観てしまいました。
八雲さん:はい。お客様の反応をダイレクトに感じる部分もあったと思うんですが、どうですか?
稲村さん:皆さんのことを軽く見ながらも、自分はやはり画面に引き込まれてしまったというか、自画自賛なんですけれども。余裕がなくて、今日はしっかり作品に見入ってしまいました。私は、今日初めてチェック以外で作品を通して観ることができました。
八雲さん:客観的に観られる部分もあったという感じでしょうか。ありがとうございます。
日本映画の中でもこれだけ様々な問題について正面から取り組んでいる本作品には、非常にチャレンジングな部分もあったと思います。よろしければ千種さんから、企画の経緯をお聞かせいただけますか。
千種さん:私が26歳の時に、早発閉経という20代30代で閉経状態になってしまう100人に1人の疾患と診断された経験から、この問題を考え始めました。だれしも、早発閉経だったり、はるかが診断されたPCOS(多嚢胞性卵巣症候群 )だったり、女性の身体には何かしら起こる可能性があるにもかかわらず、起こってから気づくということが多い現状がある。だからこそ、自分や自分より下の世代の人に、この問題を自分ごととしてもらうためには、どういう方法があるか考えていきました。その際に、高校の同級生の野本さんが、これまであまり認知されていなかった悩み、人の抱えている悩みに寄り添う映画を作っていると知っていたので、お話をしてみたという流れになります。
八雲さん:同級生同士で映画を撮ったということなんですね。
千種さん:もともと、稲村さんと野本さんがよく映画を撮ってるのを拝見していたので、お二人に声をかけさせていただきました。
八雲さん:それで、この映画が実現したということですね。
稲村さん:10代の若年妊娠について補足させていただきます。日本では確かに、取り上げられることは本当に少ないのですが、ゼロではない事象です。今データがないのですが、統計でも1.3%ぐらいでしたかね…。私自身も10代で子供を産んでいます。
今回の作品では、周りにサポートがあったので、話がだんだんだんだんまとまっていくわけですが、サポートがない場合は本当に大変です。10代の妊娠はないことではない。私も娘が3人おりますので、最後のシーンも含めて、プロデューサーと野本さんともしっかり話し合ってこういう形にさせていただきました。
──Q:皆が少しずつ見守り合えるような世の中になるには何が必要だと考えますか。
監督:素敵なご感想、ご質問ありがとうございます。そうですね。今回、登場人物たち、特に、優佳里とはるかの2人が出会えたことで救われた部分はあるかと思うんですが、奇跡的なことでもあると感じていて。今おっしゃってくださったように、自分自身に余裕がないと難しい部分はとてもあると思います。見る側の準備が整っていたとしても、それを受ける側も余裕がないと成立しないのではないかと考えています。
例えば、友人の香織が「婦人科に行って」って言ってくれたあの視線も、多分はるかにとってはすぐ「私のこと考えてくれて」って受け止めるよりは、プレッシャーに感じてしまう。「結婚考えてる方は」という広告が出てきますけど、ああいうアドバイス的なこともちょっと回避したくなってしまう気持ちもあると思います。双方の余裕とアンテナのようなものが必要だと。この映画が、そういったことを広める一助になったら良いと願っております。
千種さん:見守りですね。どういう風にしたら見てもらいやすいかっていうご質問でしたっけ?
八雲さん:お互いに見守り合うってことですよね。
千種さん:私は空手をやっていまして、作中でも空手道場で教えているという設定に監督がしてくれたんです。優佳里があそこに来たのも、はるかがいるかもしれないと思って来た面もあると思っています。ああいう自分の職場ではないところの「場」というか、会社でもない、学校でもない、もう一つの第3の場みたいな場所が、結節点になっているかなと思ったので。そういったところに来られる余裕も必要ですけれども、そういった場を地域に作っておくところがこの作品の中にもありますが、大事な点ではと思いました。ありがとうございます。
八雲さん:はい。稲村さんいかがでしょうか?
稲村さん:劇中で気づいた方もいらっしゃるかもしれないですけど、エイジア学習教室 という塾が出ました。実は私がそこをやっていまして、会社で支えてるんです。私自身が地域の子供たちの相談をして、「誰でも無料で受けられますよ」と言ってやっております。
その上で、なかなか自分だけの力では子どもたちを見守り続けることは本当に難しいです。また、それ以外の女性に関わる問題を全て受けているんです。地域にそういう場を拠点としておくことの他に、やはりそれではちょっと厳しいなというところから、この場で言うのもなんなのですが、この映画を撮った後、私は上尾市で議員になりました。そこで、子どもたち、主に女性の悩みを受けております。
いろんなアプローチがあると思います。映画という形でたくさんの方に見ていただけたように、作品でそういう部分を訴えつつ、自分として個人でもそういうことをきちんと受け止めていく(形もある)と。そういう人たちがたくさん増えていったら…。もう58歳になるんですけど、私たち大人がこれやらなきゃいけないなと、本当にそう思っております。話がまとまらなくて申し訳ないんですが。
八雲さん:何かやってみようと思うこと、まず一歩出るところから始まるのですね。ありがとうございます。
──Q:撮影されていて印象的なシーンがあれば教えてください。
監督:ありがとうございます。若干質問とずれてしまうかもしれませんが、実はこの作品は、撮影期間があって撮影をしていて、元々用意していた脚本で結末があったのですが、その結末を撮る日に本当にこれでいいんだろうかって、みんなでなりました。
その日までの、はるかはじめ周りの人物との関わりを見ていてだったかもしれないんですが…。当初の予定だと、もう少しシスターフッド的な終わり方だったんです。それぞれの幸せがあって、それぞれが今、向かってほしいと我々が願う幸せの場所で終わりたいなって…。そういったところは、お芝居プラス3人で話して変化していった部分かなと思います。そういうわけで、ラストシーンはかなり期間が空いてから半年後くらいに改めて皆さんに「すみません、脚本変わります」と撮らせてもらった流れがあります。
八雲さん:ありがとうございます。まだまだお話をうかがいたいですし、いろんな思いがありすぎてまだまとまりきってないっていうのがお客様にとっても本音のところなのかなとは思います。ぜひ、今日感じたことをもう少し掘り下げて、思い出した時にまた改めて考えていただけたらなと思います。ありがとうございます。貴重なお話をどうもありがとうございました。