2025.11.05 [イベントレポート]
「感情や浄化の部分をどういう風に物語を通して表現できるか考えるのは非常に気持ちの良いこと」11/3(月祝)Q&A『飛行家』

飛行家

©2025 TIFF
10/30のQ&Aに登壇した際のポンフェイ監督

 
11/3(月・祝)、コンペティション部門『飛行家』上映後、ポンフェイ監督をお迎えし、Q&Aが行われました。
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ポンフェイ監督(以下、監督):皆さん、こんばんは。私はこの映画の監督、ポンフェイです。こんなに夜遅くまで映画を観にきてくださって、本当にありがとうございました
 
司会:石坂健治シニア・プログラマー(以下、石坂SP):原作があるということですが、実話に基づいているお話なんでしょうか。
 
監督:小説の原作はありますが、本当の出来事ではありません。小説(原作)はフィクションです。もちろん、原作者の自身の経験や考え方とか、そういったものは、原作に書かれていました。
 
石坂SP:『飛行家』という映画で、監督のお名前(鹏飞) にも「飛ぶ」という字が入ってますので、飛行機とか空がお好きなのかな。
 
監督:そうですね(笑)。
 
石坂SP:すみません、なんか無理やりですね…
 
監督:いえいえ。小説を読んでいた時に、飛行装置にかなり心が惹かれました。例えば、カーレーサーになりたいとかであれば車が身近にあったり、絵を描きたいとなれば絵画に触れることができたりします。そういったものは(身近に)実在のものがたくさんあります。飛行装置と書かれていますが、具体的にどんな装置なのか。ここは、いろんなことを考えなければならない。しかも、この人物の人生や気持ちといったものを、どう飛行装置と結びつけることができるのか。一番難しかったところです。
最初に、どういう風に撮ろうかなということを決めました。プロデューサー、カメラマンと話して、空を飛ぶ部分はどちらかというと非現実的で、どこか飄々とシュルレアリスム(超芸術主義)みたいな形で撮りたかったんですが、地上は人間の暮らしそのものであると。そうすることで、対照的に描くことができると思いました。
 
──Q:「空を飛ぶ」がテーマに含まれた脚本を思いついた経緯を教えてください。
 
監督:撮影のロケ地はハルビンという街なのですが、非常に寒いところで、夜になると気温がマイナス35度になります。アイデアはもちろん原作の小説にありますが、小説の中に描かれているのは、年老いた主人公のリー・ミンチーがフラッシュバックのような形で自分自身の過去を語るというアイデアでした。
私が思うに、小説はわずかなことしか書かれていませんでした。例えるなら、氷の山があるとして、小説に描かれているのはほんのわずかな部分だけなんですね。私は監督として、この氷の山そのものを観客の皆さんの前に全部引っ張り出して、お見せしたいと考えました。だから、この小説を読んだ時、とても興奮していました。
この映画をやることは私にとって、非常に気持ちの良いことだと思っています。なぜかというと、人間の感情や浄化の部分をどういう風に物語を通して表現できるか考えられるからです。登場人物のリー・ミンチーは中国東北地方の人間なんですが、私自身は東北の出身ではありません。私は北京出身なんですが、実家はチャイニーズオペラの京劇をずっとやっていています。母親の実家のおじいさんたちは、登場人物のリー・ミンチーと非常に似た経験をしており、私にとってすべて思い出になっています。この思い出を、映画という記録の媒体に残すことで、歴史を記録に留めておきたいという気持ちが非常に強かったです。
 
──Q:映画に登場するダンスホールの名前を「ゾロ」にした理由を教えてください。
 
監督:私が『快傑ゾロ』(1940)を初めて観たのは、まだ母親のお腹の中にいた時です。なぜこう表現したかというと、『快傑ゾロ』という映画は、中国でも人気の映画なんですね。ヒーローです。みんなこの映画を観たいと思う作品です。
物語の展開においては、ダンスホールが完成したのになかなかお客様は来ない。どうやったらダンスホールの人気が出るのかと考えた時に、「ゾロ」という名前をつけたら非常に宣伝になるんじゃないかなと思いました。
もう一つの考え方があります。「ゾロ」はコンセプトとしてはヒーローですよね。(映画で)使っている歌でも繰り返し、繰り返し「Zorro’s back」 と歌います。要は、主人公のリー・ミンチーはゾロですよね。「リー・ミンチーが帰ってきた」みたいなことも込めて「ゾロ」と名付けました。
もう一つ、ゾロという人物像なんですけれども、見た目はか弱い感じがするんですが、実は、本物のヒーローですよと、とても強いでんすよと表現したかったんです。
 
──Q:リー・ミンチーが空を飛ぶシーンがあります。撮影のために訓練したのでしょうか。
 
監督:3回、空を飛ぶ場面があります。1回目は映画が始まってすぐの場面です。2回目に登場したのは、友達との賭けのシーンですね。3回目は映画の後半の部分です。
どういう風に撮影したかというと、スタントマンが本当に空から飛び降りています。高度3500mの高さから飛び降りるんですが、一日6回飛びます。どのように撮るかというと、スタントマンが先に飛び降りて、カメラマンが一歩遅れて飛び降りて、下のスタントマンを撮影します。もう一つのやり方は、カメラマンが先に飛び降りて、スタントマンが一歩遅れて飛び降ります。カメラマンは上を見て彼を撮影します。実は、このシーンは6日間かけて繰り返し、繰り返し撮影しました。このようなリアルな映像は、こういう風にやらないと撮れないと思い、このようなやり方で撮影しました。
役者はどのように撮影に臨んだかというと、彼は飛び降りて氷の上に着地するんですが、あらかじめ氷の表面に別の人が準備していてちょっと滑っていく。ちょうど着地したっていう形をまず撮ります。一方、クローズアップのシーンや彼の表情、動き、そういったものは後で撮って付けています。どういう風にジャンプして飛び降りるのか、どういう風に回転するかは、現場にプロの先生が居て、きっちりと指導してくれました。このシーンの撮影中、役者のジャン・チーミン は本当に大変でした。ぐるぐる回転する場面がありますよね。ワイヤーで巻いて、前後に大きなクリップで挟んで回転します。大きな扇風機も回して、すごく速いスピードで回っていくと、だんだん、だんだん目が回ってですね、見ていると、彼の白目しか見えないんですよ。大丈夫かなと思って止まったら、彼が吐いてしまいました。そうしたら、「監督、(今のカット)大丈夫ですか」って言ってきたので、OKとしましたが、彼が非常にプロフェッショナルで「いや、ちょっと今の表情ではだめだから、もう1回撮り直しましょう」となりました。2回目の時、彼は本当に気を失ったような演技を見せてくれました。
 
──Q:監督が登場人物を描くうえでのこだわりを教えてください。
 
監督:ご質問ありがとうございます。非常に話が長くなります(笑)。小説のところから話しをしなくてはいけないと思います。小説に登場したすべての人物は、非常にユーモラスで、独特な存在だと私は思ったのですが、どの人物も裏には見えない物語があって、なかなか語ってくれない。奥行きがあるような人物が小説の中ではたくさん描かれていました。
私は映画化するとき、「この人物たちをどう描こう」と考えます。「小説家は人物をどのように描いているのかなあ」とか、いろんなことを考えます。やはり、このような人物が実際に生きていて、当時の中国東北地方で、彼らがどのような暮らしをしていたのか、実際に体験しました。現地では、この世代のより上の、彼らの親世代にいろいろインタビューをして、たくさん話を聞かせてもらいました。本当にいろんなアイデアのリサーチを通して、どんどんアイデアが湧いてきたわけです。その中で一番楽しかったのは、東北地方の労働者の皆さんです。性格はさっぱりしていて、とても気さくな方ですよね。非常に話が面白くてとにかく楽しくて、本当に豪快な感じがします。
東北地方の皆さんの特質を抽出して、映画の人物作りに活かしました。
先ほど言った話は、織物で例えると縦糸の話なので、これから横糸について話したいと思います。映画の中で人物を描くというのは、なかなか難しいことだと思うんですよね。その人の一生を描くことになるわけで、この一生において、どのような人と出会ったのか、どういった出来事があるのか。そうすると、登場人物を多くして、この人たちとの出会いによって物語を織りなすことになります。皆さんも映画をご覧になって分かったと思いますが、最初に現れた人は途中で消えてしまったとか、途中で人はまたどこかに行ってしまったとか、最後に登場した人はどうなるのかっていうのは分からなかったり、そういった形で、横糸を織り込んでいくという、そういう作業をしていました。

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