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10/29(水)に、アジアの未来部門『光輪』上映後に、ノ・ヨンワンさん(監督/脚本)、チェ・ガンヒョンさん(俳優)をお迎えし、Q&Aが行われました。
 
司会:石坂健治シニア・プログラマー(以下、石坂SP):それでははじめに、ゲストより一言ずつお言葉をいただきたいと思います。
 
ノ・ヨンワン監督(以下、監督):皆さんこんばんは、私は映画『光輪』の監督を務めました、ノ・ヨンワンと申します。お会いできて嬉しいです。
 
チェ・ガンヒョンさん(以下、ガンヒョンさん):(日本語で)こんにちは。私は韓国の俳優のチェ・ガンヒョンです。今回の作品でソ・ミンジュン役を演じました。東京国際映画祭で皆さんにお会いできてとても嬉しいです。よろしくお願いします。
 
石坂SP:このチームは本当に若いチームで、ガンヒョンさんが演じられたミンジュン役は27歳の設定ですが、ガンヒョンさんはおいくつでいらっしゃいますか。
 
ガンヒョンさん:韓国の数え年で現在28歳。そして撮影時は27歳でした。
 
石坂SP:まさにあの「リアル・ミンジュン」がそこにいらっしゃる感じですね。
 
──Q:主人公ミンジュンのモデルがいるのか、お聞かせください。
 
監督:まずこの映画において一番大切な点は、「リアルに見えること」という風に考えました。宅配ドライバーという職業は、韓国の人々の生活に非常に密接に存在しています。けれども、人から見えない位置で人と人とを繋いでいる重要な職業だと考えています。ですから、現実感を出すためには、このミンジュンという登場人物をよりリアルに見せてくれる職業であったと思います。言ってみれば、ミンジュンという人物は、私たちの社会のどこにでもいるような人物だと言えると思います。
 
石坂SP:ミンジュンは本当に怒りませんよね。いつもポーカーフェイスです。あれはガンヒョンさんがご自身でそういう役作りをされたのか、あるいは監督と話し合ったのか、教えてください。
 
ガンヒョンさん:私がミンジュンを演じながら最も重点を置いて考えていたのが、「大丈夫だ」ということでした。どんなことがあっても「大丈夫だ、上手くいくだろう」「大丈夫だ、できる」と考えながら演技をしていました。
ミンジュンという人物は子どもの頃から、幼い頃から、両親そして兄から、たくさんの苦難を味わって育ってきました。だから、そんな中で責任感も育まれました。ですからミンジュンにとっては、怒りを外に出すよりも怒りを抑えることの方が自然なことだったのです。
 
石坂SP:ありがとうございます。本当にね、なんとも切ない。
 
──Q:監督はこの映画を通してどのようなメッセージを観客に送りたいのでしょうか。
 
監督:まず、私はこの映画を作りながら、断絶しがちな人との関係について考えました。人と人がより近づくように、どうしたら出会うことができるのかということをいろいろ考えましたし、この断絶した社会の中で、どうしたらより良い社会になっていくんだろうということを悩みました。映画を観て劇場を出た時に、観客の皆さんの心の中に、登場人物がそのまま生き続けていて欲しいなという気持ちでこの映画を作りました。
 
──Q:これだけ常にカメラに密着されている環境の中で演技をするのには、どんな苦労がありましたか。この映画に出演される前に演技のご経験はありますか。
 
ガンヒョンさん:僕にとって『光輪』が初めての長編映画への出演です。それ以前は、韓国で短編映画に何本か出演しています。演技についての話ですが、カメラのことを考えたことは一度もありません。このキャスティングが確定してからは、本当に毎日のように朝起きたらミンジュンとして生きよう、そして夜寝るまでずっとミンジュンでいようと思っていました。そして、これはちょっと特殊だと思うのですが、撮影に入る前に監督とお会いして、すべてのシーンをあらかじめリハーサルしました。撮影に入ってからはロングテイクが多かったのですが、僕はただミンジュンとしてそれぞれの状況に合わせて、その時の感情を表現していれば、カメラがずっとそれを撮っていてくれたという感じです。
 
──Q:エンドロールの意味を教えてください。
 
監督:どこかできっと繰り返されているであろう生活というものを表現したかったからです。先ほども少し触れましたが、はっきりと示すエンディングよりも、どうしたら今、自分たちが生きている環境の中でこういうことがなくなっていくのか、もしミンジュンのような行動を取る人を自分が目にしたら、自分は果たして何とかしようとするだろうかと、映画を観た観客の皆さんが、少しでも思い悩んでみてほしいという気持ちがありました。ですから、エンディングクレジットで、ある姿をもう一度(映し)出して、皆さんの心の中にだけでも印象に残って欲しいという気持ちを込めました。
 
石坂SP:ありがとうございます。最後になりますが、今晩、ワールドプレミア上映でございまして、皆さんは世界で最初の目撃者でございます。これから世界に羽ばたいていく作品になります。ぜひ皆さん、「最初につぶやく権利」をお持ちですから、存分に広めていただければと思います。よろしくお願いいたします。