
©2025 TIFF
聖人マザー・テレサを現代的な視点で描くコンペティション部門出品作『マザー』が上映された。日本劇場公開作ではルッキズムや性差別と闘う女性を主人公とした『ペトルーニャに祝福を』(2019)で知られ、芸術的側面とフェミニズムを組み合わせた“フェムアーティビスト”と自らを定義する、テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督が取材に応じた。
【『
マザー』あらすじ・概要】
聖人として知られるテレサの人間的側面に焦点を当て、現在のフェミニスト的視点から描いたドラマ。インドのコルカタを舞台に、ロレト修道女会を離れ、自らの修道会を設立しようとしていた時代のマザー・テレサ。自らの後継者として指名しようとしていた修道女が妊娠し、中絶を望んでいることを知って、現実と信仰のはざまで葛藤し、精神的に追い込まれてゆくテレサの1週間が描かれる。
──なぜ、今、マザー・テレサについての映画を作ろうと思ったのでしょうか?
我々が良く知る一般的なマザー・テレサのイメージがありますが、実際の彼女はどんな人だったんだろう……と、以前から探りたい気持ちがありました。今から約100年前、彼女が38歳だった時、全てを捨てて自分がやり遂げたいことに勇気を持って踏み出す女性の重要な1週間を捉えたかったのです。
この映画を作るにあたり、多くのリサーチをしました。テレサの日記を参照したり、様々な修道女たちに取材をしました。神父は実在したベルギーの方がモデルです。(テレサの後輩で妊娠する)シスターのアグニェシュカというキャラクターは私が創造しましたが、テレサは(宗教上の)マザーになることが、子供を生むことと重なり、彼女の欲望という捉え方もできると思います。あとは、私自身が現代の一人の女性として気になっていることを映画の中で表現したかったのです。
──国際的に活躍するノオミ・ラパスがテレサを演じています。起用の理由を教えてください。
マザー・テレサについてリサーチを進めると、彼女は当時の女性としてはものすごくパンクのエネルギーを持った人、反抗的で、何に対しても、ものすごい力で挑んでいった人物だったとわかりました。ですから、そういう精神を持っている人に演じてほしいと思い、パンクなところがあるナオミはぴったりでした。また、彼女は「ペトルーニャに祝福を」を観ていて、私のオファーを受けてくれたのです。
──劇中では、テレサの心象を表すような音楽として、賛美歌やクラシック楽曲ではなく、パンクロック風のエレキギターが鳴り響きますね。
パンクは自由を象徴するものだと思うのです。テレサが自分で選んだ道を進み、自信を持って自由の身になってやりたいことをやり遂げる、その象徴がパンクロックだと考えました。
これまで、男性の主人公、歴史的な人物、彼らの歩んだ人生を題材にした作品はたくさん作られてきました。そして、女性は常に献身的に……という描かれ方が多い中、困難な時代の中で、自身の信念をやり遂げた女性を描きたかったのです。
今の世界も当時とはまた異なる厳しい状況にありますが、現代の女性にメッセージを送ることができるのであれば、やはり自信を持って自分のやりたいことをやりましょう。と、特に若い世代の方たちに対して伝えたいです。
──芸術的側面とフェミニズムを組み合わせたファムアーティビスト(Femartivist)として活動されています。世界には多くの優れた女性芸術家が存在しますが、映画界でロールモデルにしたり、目指すような女性監督はいらっしゃいますか?
キラ・ムラートワ、リナ・ウェルトミューラーら歴史的な女性監督の偉業を伝えていきたいと思っています。また、女性ではありませんが、大島渚監督の作品の緊張感や表現力を尊敬しており、いつか自分も近づけたら、と願っています。
第38回東京国際映画祭は11月5日まで、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催。『マザー』は、11月3日TOHOシネマズ シャンテにて17:40~上映。チケットは
公式オンラインチケットサイトで発売中。

©2025 TIFF
聖人マザー・テレサを現代的な視点で描くコンペティション部門出品作『マザー』が上映された。日本劇場公開作ではルッキズムや性差別と闘う女性を主人公とした『ペトルーニャに祝福を』(2019)で知られ、芸術的側面とフェミニズムを組み合わせた“フェムアーティビスト”と自らを定義する、テオナ・ストゥルガル・ミテフスカ監督が取材に応じた。
【『
マザー』あらすじ・概要】
聖人として知られるテレサの人間的側面に焦点を当て、現在のフェミニスト的視点から描いたドラマ。インドのコルカタを舞台に、ロレト修道女会を離れ、自らの修道会を設立しようとしていた時代のマザー・テレサ。自らの後継者として指名しようとしていた修道女が妊娠し、中絶を望んでいることを知って、現実と信仰のはざまで葛藤し、精神的に追い込まれてゆくテレサの1週間が描かれる。
──なぜ、今、マザー・テレサについての映画を作ろうと思ったのでしょうか?
我々が良く知る一般的なマザー・テレサのイメージがありますが、実際の彼女はどんな人だったんだろう……と、以前から探りたい気持ちがありました。今から約100年前、彼女が38歳だった時、全てを捨てて自分がやり遂げたいことに勇気を持って踏み出す女性の重要な1週間を捉えたかったのです。
この映画を作るにあたり、多くのリサーチをしました。テレサの日記を参照したり、様々な修道女たちに取材をしました。神父は実在したベルギーの方がモデルです。(テレサの後輩で妊娠する)シスターのアグニェシュカというキャラクターは私が創造しましたが、テレサは(宗教上の)マザーになることが、子供を生むことと重なり、彼女の欲望という捉え方もできると思います。あとは、私自身が現代の一人の女性として気になっていることを映画の中で表現したかったのです。
──国際的に活躍するノオミ・ラパスがテレサを演じています。起用の理由を教えてください。
マザー・テレサについてリサーチを進めると、彼女は当時の女性としてはものすごくパンクのエネルギーを持った人、反抗的で、何に対しても、ものすごい力で挑んでいった人物だったとわかりました。ですから、そういう精神を持っている人に演じてほしいと思い、パンクなところがあるナオミはぴったりでした。また、彼女は「ペトルーニャに祝福を」を観ていて、私のオファーを受けてくれたのです。
──劇中では、テレサの心象を表すような音楽として、賛美歌やクラシック楽曲ではなく、パンクロック風のエレキギターが鳴り響きますね。
パンクは自由を象徴するものだと思うのです。テレサが自分で選んだ道を進み、自信を持って自由の身になってやりたいことをやり遂げる、その象徴がパンクロックだと考えました。
これまで、男性の主人公、歴史的な人物、彼らの歩んだ人生を題材にした作品はたくさん作られてきました。そして、女性は常に献身的に……という描かれ方が多い中、困難な時代の中で、自身の信念をやり遂げた女性を描きたかったのです。
今の世界も当時とはまた異なる厳しい状況にありますが、現代の女性にメッセージを送ることができるのであれば、やはり自信を持って自分のやりたいことをやりましょう。と、特に若い世代の方たちに対して伝えたいです。
──芸術的側面とフェミニズムを組み合わせたファムアーティビスト(Femartivist)として活動されています。世界には多くの優れた女性芸術家が存在しますが、映画界でロールモデルにしたり、目指すような女性監督はいらっしゃいますか?
キラ・ムラートワ、リナ・ウェルトミューラーら歴史的な女性監督の偉業を伝えていきたいと思っています。また、女性ではありませんが、大島渚監督の作品の緊張感や表現力を尊敬しており、いつか自分も近づけたら、と願っています。
第38回東京国際映画祭は11月5日まで、日比谷・有楽町・丸の内・銀座地区で開催。『マザー』は、11月3日TOHOシネマズ シャンテにて17:40~上映。チケットは
公式オンラインチケットサイトで発売中。