2025.11.04 [イベントレポート]
「複雑な人、あるいは複雑な人間関係に惹かれます」10/28(火)Q&A『100 サンセット』

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©2025 TIFF

 
10/28(火)ウィメンズ・エンパワーメント部門『100 サンセット』上映後、クンサン・キロンさん(監督/脚本/プロデューサー)をお迎えし、Q&Aが行われました。
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クンサン・キロン監督(以下、監督):本日はお招きいただき、ありがとうございました。この東京国際映画祭におきまして、『100 サンセット』を、アジアン・プレミアとして上映させていただき、本当に嬉しく思っております。
 
司会:清水裕(東京国際映画祭事務局):ありがとうございます。まず私の方から監督にお聞きしたいと思います。
『100サンセット』の企画が始まった経緯について伺いたいです。
 
監督:この企画の始まりは、2021年頃、ちょうどマスタープログラムをトロントで始めた頃でした。私はバンクーバーからトロントに引っ越したので、このパークデール地区は、私が育ったところではありませんがおばが住んでいて、よく行っていました。パークデール地区はリトルチベットと言われるほど、チベット民族が6000人ぐらい、かなり密集して住んでいます。ちょうどその頃、おばの住んでいたサンセット・タワーという場所からインスピレーションを受けて『100 サンセット』というタイトルになりました。その頃、脚本を書き始めました。
 
司会:映画に登場する女性は、歳の離れた男性と結婚している設定でした。描こうと思ったきっかけなどはあるのでしょうか?
 
監督:もしかしたら若い女性がそういった歳の離れた男性と結婚するという状況はよくあるのではないかなと思ったからです。すごく複雑な状況ではないかもしれません。そういうことって現実でもあり得る、そんなに珍しいことでもなく起こるのではないかという気がしておりました。
 
──Q:映画に登場するチベットの方たちは、カナダに暮らす移民として描かれます。長くカナダに暮らしているのでしょうか、最近移民としてカナダに来たのでしょうか?
 
監督:最近です。この映画の舞台は、2012年です。カナダでは、2011年から17年の間、インドの北東部、チベットの方も含めて、かなり多くの方々がカナダに移民する一つの波がありました。私がキャスティングをした主人公の女の子の一人も、私が撮影する8ヶ月前に来たばかりというような最近、移民としてカナダに来た方でした。
 
──Q:実際に、カナダに移民されたチベット人と同じ生活を描いているのでしょうか。
 
監督:現実を完璧に捉えた形には表現できていないかもしれしません。ただ、一つ言えるのは、このコミュニティが非常に巨大であるということ。コミュニティに住んでいる限りは、レストランもそうですし、建物の大部分がチベットから来られてる方で占められていて、本当にそこの中で生活していると、他のカナダ人の方とは触れないで、生活している、生活することができるというような、そういう状況があります。
もしかしたら少し誇張されているかもしれませんけれども、他の方と全く触れずにそこで生活することができるような部分を捉えたかったのです。
 
──Q:季節やロケ地のこだわりを教えてください。また、カナダにはオーロラのイメージがありますが、なぜオーロラを撮らなかったのでしょうか。
 
監督:ロケハンには非常にこだわりました。ロケーションは屋内もそうですし、外の景色にも、とてもこだわりました。
ただ問題は、カナダでは冬がどんどん温かくなってしまっているということです。冬を求めて、オンタリオのバリーというところに行って、そしてしばらく経ったら雪が全部溶けてしまったので、また雪を探してロケハンすることになってしまいました。
 
──Q:主人公が物を盗む場面があります。ここで表現されていることはどんなことでしょうか。
 
監督:私はこの主人公は、とても複雑なキャラクターだと思ってます。私は元々、複雑な人、あるいは複雑な人間関係に惹かれるんです。彼女は最初の頃はほとんど口をきかないので、私たちがこの主人公のことを彼女の行動とか、そういうパターンを通して知るわけなんです。
彼女にとって物を盗むというのは、ある意味では自分の表現かもしれないし、自分の興味があることをいろいろ探求していくことの表れではないかと思います。ただ、よくよく見てみますと、彼女が盗むものは必ずしもお金の価値がそれほどあるものではなくて、どちらかというと記念になるものとか、自分を表現するための道具だと思うんですね。
元々彼女はそういうものを盗んでいたけれども、友達からお金を盗んでほしいと言われた時に、ここでその盗みというものの方向性が変わってくるわけです。今までの盗みとちょっと違って、今度は倫理に対して問われるような種類の盗みになって、その時彼女は、自分で直面しなければいけないということになります。
私は必ずしも、このことに対して何か判断を下すという風には思っていません。ただ、それが一つの彼女の表現として捉えています。悪いとか良いというような判断はしておりません。

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